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シニア起業家が開発、水中でできるEMS

シニアベンチャー企業、フカエ・テクノロジーズ(川崎市高津区下作延)は、独自技術である「絶縁体電極」を用いることで、風呂や足湯といった水中でも使えるEMS(筋肉電気刺激)トレーニング機器を開発した。血行促進やリラックスが期待される温浴中(水中)で使用できるEMS機器は、これまでに例がないという。高効率のトレーニング効果が期待でき、毛穴などに電流が流れることで感じる独特のピリピリ感もなく、局所的な筋肉をしっかりと収縮させる。「世界で唯一無二です」(深江公俊社長)とする絶縁体電極の開発が肝だったという。

世界唯一の「絶縁体電極」

市販の低周波治療器やEMS機器は、導電性電極であるジェルパッドを部位に直接当てて使用する。しかし、皮膚が濡れていたり、発汗していたりすると、電流が毛穴や汗腺に入ってしまい、痛みややけどの恐れがあった。また、水中での使用にはリスクもあった。

同装置は、絶縁体電極を使用。絶縁体は電気を通さないが、静電容量(電気をためる力)が大きく、電圧をかけることでプラスとマイナスにきれいに分極する。

その絶縁体パッドを人体に当てることで、人体内のイオンがプラス・マイナス極と反応。その間に微弱な電流が発生し、効率よく筋肉を刺激する仕組み。

絶縁体電極はすでに特許を取得済みで、現在、欧州と米国、中国にも特許申請中だ。

開発は既に終了しており、今後は「湯足FIT(ゆったりフィット)」という製品名で販売する予定。

本体と専用パッド、固定ベルトのセットで構成。いずも完全防水。使用時は「筋肉ケアモード」(5Hz)と「筋トレモード」(30Hz)が選択可能だ。「当社の実証実験では週3~4回の使用で変わることが確認できました」(深江社長)としており、直販のほか、高齢者・リハビリ施設などにも販路を広げる。

■私財を投じて製品化

深江社長は71歳。大手精密機器メーカーの技術者として太陽電池などの研究開発を担当していた。定年後に起業し、同製品の開発に本格的に着手した。

とはいえ、大手企業の技術者時代と比べ、開発資金や開発環境を自ら用意しなければならない。そのため、私財を投じ、中には自宅の一室を改装して研究所にした。自作の測定器もある。

材料の調達一つにしても、当初は「名もない新興ベンチャーには売ってもらえない」という壁にぶつかった。

それでも諦めずに研究を続け、開発にこぎつけた。「粒は小さいけれども、世界で唯一のものができました。普及はこれからです」と、新たな挑戦に意欲を燃やしている。

(2023年10月号掲載)