高圧ガス販売、冨士山(相模原市南区鵜野森)は、日本発の素材「カーボンナノチューブ(CNT)」の用途開拓に乗り出した。社内に「CNT推進室」を設置。CNTを活用して新製品・新技術開発をしたい中小・ベンチャー企業に対し、サンプル出荷をしていく。CNTは、アルミニウムの半分程度と非常に軽いものの、強度は鋼の約20倍、熱伝導性は銅の10倍あるとされる。そのため、プラスチック成形や塗料、洗剤などの幅広い分野において高付加価値製品につながるとしており、各方面に訴求していく。
冨士山、高付加価値目指す企業にサンプル出荷
CNTは、炭素のみで構成される直径ナノメートル( ナノは10億分の1)サイズのチューブ状の物質。1991年に飯島澄男・名城大学終身教授によって発見された。
シリコンの代替として半導体の高性能化につながることが期待されるほか、医療機器のエックス線放射に使われるなど、用途開発が進められている。今後は世界的な市場拡大も見込まれる。
同社がサンプル出荷するのは、フレーク(多層CNTアレイをほぐした状態)や、アレイ(基板上に垂直配向した多層CNT)、配向性を有する多層CNTの積層シートなど。いずれもCNTを製造する産業用ガス大手、高圧ガス工業・土浦研究所(茨城県土浦市)から仕入れる。
八子利佳常務は「生活に密着したものに普及する可能性は十分にあります」と説明。例えば、樹脂にCNTを配合すると電気を通せるようになったり、潤滑油に混ぜれば滑りがよくなったりする。同事業を「10年かけて育てていきたいです」としており、売上高10億円規模に拡大させていく考えだ。
「CNTは日本生まれですが、世界中で研究が進んでおり、日本は後れを取っています。だからこそ、国内で普及させていきたいです」との信念が原動力にもなっている。