カキの名産地でもある台湾西海岸には、海辺に養殖場が点在している。カキの身を取った後には、貝殻が年間12万トンもの破棄物として出てくる。貝殻を処理する処分場の周辺では、悪臭などの環境被害も問題になりかねない。この貝殻を原料にした機能性繊維「シーウール」を、繊維リサイクルを手掛ける誠佳科紡(Hans Global / Creative Tech Textile、台南市)が開発した。糸はパートナーのメーカーを通じて、合計5つのブランドで製品化される。
機能性繊維に再生
「カキの貝殻は宝の山」。王葉訓董事長には確信がある。自身も海辺の街で育ち、カキの養殖は身近な風景だった。かつて台湾の主要産業でもあった紡績産業の強みも生かし、新しい素材の提案を試みようと、2010年に会社を設立。大学と連携して製品の開発に成功し、特許も取得している。
地元・台南で回収されてきたカキの貝殻を洗浄し、細かく砕いて高温で溶融した上で、ペットボトルを破砕して作ったポリエステル繊維と混紡して製造する。出来上がった繊維には断熱・保温や紫外線防止の効果があるとされる。触感は羊毛に近いが、においもない。
米中両国にオフィスを構えるほか、日韓や東南アジア、欧州の市場にも供給している。
王董事長は今後、アパレルに加えて、生活用品などシーウールを素材にした応用品の開発にも力を入れる方針。「コスト面で競争力があります。商品の価値向上と廃棄物問題を同時に解決できます」。日本市場に対しても「思いを直接、消費者に伝えたいです」と、生産や販売面でのパートナーを探したい考えだ。