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エアー緩衝材、バイオマスで環境配慮

通信販売などの梱包時に使われるエアー緩衝材。川崎市多摩区登戸にある、ネクサスエアーは、そのフィルムを自社工場で生産し、梱包現場などで空気を入れてエアー緩衝材にする製造装置とセットで提供している。エアー緩衝材のユーザーとなる通販業界の市場は拡大の一途をたどり、同時に緩衝材の使用量も増えている。脱炭素に対する機運が高まる中、緩衝材も環境対応が欠かせない。同社は早い時期からバイオマス資源を使った「バイオマスエアー緩衝材フィルム」への転換を図っており、今やほとんどの商品(規格品)を切り替えた。業界で初めて「バイオマスマーク」を取得したほか、地元・川崎市の「低CO2川崎ブランド」などにも選ばれている。

脱炭素社会構築に貢献

■使うその場で生産

同社製品が広く使われるのは、物流や出荷部門の現場。最近では、企業の物流業務を一括して請け負う3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)事業で採用される動きも進む。専用のエアー緩衝材製造機を置いてもらい、その場でフィルムに空気を充てんし、緩衝材にしていく。連続して緩衝材を生産し、その長さは最速機種で毎分25メートルにも及ぶ。

緩衝材の種類も豊富だ。硬く剛性が高い「高密度ポリエチレン(HDPE)」と、軟質の「低密度ポリエチレン(LDPE)」の2種類があり、形状も枕型やBubble型などさまざま。これらは、梱包する商品の形状や数量によって選ばれる。

エアー緩衝材のビジネスモデルは、複写機・複合機のそれと似ている。本体(緩衝材製造機)はレンタルし、消耗品に当たるフィルムを販売する。同社は国内で累計1000台以上をレンタルしている。

■原料に「廃糖蜜」使用

エアー緩衝材の業界は、早くから海外製の製造機が普及し、いくつもの競合がいる。

その中で、同社が大きな差別化としているのが環境対応。すでに同社製の規格品フィルムの9割超が、バイオマス由来の原料を採用した「バイオマスエアー緩衝材」となっている。これは、サトウキビから砂糖を製造する過程でできる「廃糖蜜」を利用したグリーンプラスチックを10~30%混合させたものだ。

サトウキビには成長する過程で大気中のCO2を多く吸収する優れた光合成能力がある。そのため、使用後のエアー緩衝材が廃プラスチックとして焼却されてCO2を排出しても、再び吸収される。2013年には日本有機資源協会から「バイオマスマーク」認定も受けた。

「マークを取得した13年当時は『バイオマス』といっても、顧客の認知度が低く、コストアップしてまで環境対応製品を購入するケースは多くなかったです。ただ、ここ数年で環境に対する意識が急激に変化しています」(永崎孝彦執行役員)と語る。

■香り付きも発売

新しい挑戦も始めた。香り付きのエアー緩衝材「フレグランスエアークッション」をラインアップに加えたのだ。

お客さんが選んだ香料を、同社工場内でフィルム内部に微量に封入して供給。それを商品梱包時のエアー緩衝材として使用し、廃棄時に割ることで「香りのサンプル」としての機能がある。

化粧品や芳香剤メーカーが、商品の香りを販促用に詰めるなどの用途を想定。「コンスタントに引き合いが来ています」(永崎執行役員)と言う。

エアー緩衝材の普及と環境配慮を同時に実現しながら、包装・梱包を支え続けている。

(2023年4月号掲載)