住まいの産業 / ライフサイエンス

アイデア勝負、引っ越し業界に新風

スタームービング(横浜市港北区新羽町)が引っ越し業界に新風を吹き込んでいる。アメリカンコミックのヒーローがトラックの車体に躍る引っ越し会社。大小のさまざまな業者が入り混じり、競争が激しい同業界だが、その中でも「ベンチャー特化型オフィス引越し」や「ストーカー被害にお悩みの方が安心できる引越し」「タワーマンション特化型引越し」といった独自サービスを開発し、異彩を放つ。山本恒夫社長が21歳で起業し、25年で年間1万件を手掛ける中堅企業に成長させた。

脱価格競争で独自サービス展開

■ホスピタリティ重視

「スター引越センター」として、関東を中心に東北にも拠点を持つ企業。社員数は75人で、平均年齢は30代前半と若い。引っ越しにとどまらず、付帯するリサイクル回収や遺品整理までもワンストップで手掛けている。

「きちんとコミュニケーションを取り、ホスピタリティを大事にするのが“本当の引っ越し”です」と山本社長は力説する。

また、新型コロナ下では、非対面で「密」を回避するスマートフォン完結の「オンライン見積もり」をいち早く導入したほか、首都直下型地震や南海トラフ地震を想定し、昨年には全国の引っ越し会社が参加する「全国災害支援ネットワーク」にも加盟。常に新しいことにチャレンジしている。

■ベンチャー特化型

こうした中、ユニークなサービスとして注目されているのが「ベンチャー特化型オフィスの引越し」だ。少人数で運営する中小・ベンチャー企業に対し、オフィス移転の手間を少しでも減らしたいという思いから始めた。

コピー機などの重量物搬送はもちろん、入居前後の電気やインターネット配線など、通常は顧客が自分で他の専門業者に委託する作業までを一括対応する。

希望により、オフィス機器や事務用品の引き取り・新品販売、オフィスレイアウト・内装のデザインなども手配する。また、社員個人の引っ越しも1割引で請け負う。

「成長に応じて移転する企業のリピートオーダーも多く、今や年間受注の4割近くをオフィス関連が占めています」と語る。

■ストーカー対策も

一方、世間的なニーズの高まりを受け、「ストーカー被害対応の引越し」もメニュー化した。

移転先住所などの情報を漏らさないようにするのはもちろん、盗聴器の調査やオンライン打ち合わせ、顧客が立ち会わない引っ越し作業など、ストーカーに移転を知られない対応を徹底しているという。

「タワーマンション特化型引越し」も、管理人への計画申請など手間のかかる作業を代行するサービスとして提供。地下駐車場に入れる全高2.8メートル以下のトラックの用意や、エレベーターの養生など、タワーマンション特有のノウハウを蓄積している。

引っ越し業界では見積もりサイトなどの浸透により価格競争が進む。だが、同社はアイデアを武器にした独自サービス展開により、価格競争とは一線を画すことに成功する。「他社がやらないこと、やりたくないことをやることで、利益を出しやすい会社に変わりました」と明かしている。

(2024年3月号掲載)