住まいの産業 / ライフサイエンス

わずか数滴、がんリスク判定

レナテック(伊勢原市高森)は、わずか1回の採血(6cc)だけで、部位別のがんリスクを判別し、早期発見につなげる「メタロ・バランス検査(MB検査)」の普及を進める。同検査は、半導体製造分野で培った金属分析技術を医療分野に応用したもので、神奈川県立がんセンター、千葉県がんセンターとの共同研究で開発した。6月までに本社近くに分析センターを増設し、年間12万人分の検査ができるよう体制を整える。

レナテック、半導体検査技術を応用

半導体関連製品や光触媒脱臭装置などを手掛けるベンチャー企業だが、数年前から医療分野に参入。経済産業省・戦略的基盤技術高度化支援事業(通称・サポイン)にも採択され、実用化を進めていた。

同検査は、半導体工場で金属汚染を調べるために使われる「誘導プラズマ質量分析装置」を利用。採血後、血中に含まれるナトリウムや鉄、亜鉛など、計17種類の微量元素濃度のバランスを計測する。この濃度のパターンが、がんの種類によって異なるという。

「私たちの身体には微量元素が含まれており、それをコントロールしています。しかし、がんになると濃度バランスが崩れてきます」と加藤桂社長は説明する。

同検査でリスクが分かるがんは、男女共通で5種類(胃がん・大腸がん・肺がん・すい臓がん・肝臓がん)。男性の場合は前立腺がん、女性は乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんも分かる。

被験者に対し、それぞれのがんリスクを、低い順にA~Dの4段階で判定する。検査時間は1人6分。他のリスク検査と比べても、かなりの低コストでできるという。現在、1人1万5000円(税別)で提供しているが、「将来は1万円を切る価格を目指しています」(加藤社長)と話している。

同社は伊勢原の本社内に分析センターを1棟構えており、今後はもう1棟増やす。総投資額1億5000万円を投じ、検査装置も2台新規導入する計画だ。検査体制を拡充することで、全国の病院やクリニックなどに採用を働きかけ、今年度は5万人の検査を目指している。

(2021年1月号掲載)