機器・装置・製品/ロボット

ものづくりで大豆農家を手助け

国産大豆を守りたい―。金属加工業のヒラミヤ(川崎市高津区久地)と大矢製作所(同市中原区)、渡辺製作所(同)の3社は、大豆の半自動選別機を開発した。農家にとって大変労力のかかる選別を自動化するもので、小規模農家でも導入しやすい小型タイプだ。購入できない農家に対しては、選別作業を代行し、その工賃分は大豆で支払うという「物々交換」の仕組みも構築した。

川崎の3社が半自動化装置開発、物々交換も

開発した装置「用心棒」は、まず脱穀後の大豆を、農林水産省の規格に応じ、形が保たれた「売れるもの」と「売れないもの」に分別。そして大・中・小のサイズに自動選別する。

具体的には、装置上部のホッパーに大豆を投入すると、形状選別台で成形粒と、そうでないものに分けられる。成形粒は、回転する選粒器を転がりながら、サイズごとに振り分けられる。

選別能力は1時間あたり約30キロ。軽トラックに載せて運べる大きさだ。

大豆はサイズで規格が決まるため、手間が掛かっても選別作業は欠かせない。収穫期になると、地元の高齢者などを季節雇用し、手作業で選別する農家も少なくない。しかし、自動化するのにも、市場に出回っている大豆選別機は小規模農家にとっては高額で手が出せないという。その点、同装置は30万円程度で購入できる。

■初摘みを体験してほしい

それでも導入できない農家に対しては、大矢製作所と市内福祉施設で選別を受託する。その場合、選別した大豆の30%を“工賃”として受け取る。

3社は企業として収益性を求めるよりも、むしろ「国産大豆の自給率アップへの貢献」(ヒラミヤ・平宮健美社長)が狙いという。選別作業の自動化や外注化ができれば、栽培に集中できるようになり、「農家の人たちも稼げるようになります」(平宮社長)としている。

豆腐やみそなど日本の伝統的な食文化を支える大豆。貴重な「たんぱく源」であると同時に、代替ミートなどの加工品やプロテイン飲料の原材料としても広く使われる。ただ、国内自給率は10%にも満たない。

3社は「地域の大豆農家が活性化しなければ、自給率も高まらない」と考えており、同装置を広く普及させていく。

(2022年1月号掲載)