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もうかる製造業、欧州の工作機械で

 

「欧州にはモンスターのようなとんでもない工作機械がある」。欧州を中心に世界中の優れた工作機械を輸入販売するエスアンドエフ(東京都大田区蒲田)の白岡佳寿美社長はこう語る。工作機械の本場・欧州には、圧倒的なスピードと生産性を実現するものがそろっており、同社はそうしたマシンを発掘し、国内製造現場への普及を図っている。現在、中小製造業の多くは、原材料や電気代高騰などの逆風下で、十分な価格転嫁ができず収益性が低下している。解決策の一つが生産性向上だ。同社が販売する欧州製の工作機械には、短時間で超量産が可能になるモデルがあり、「もうかる製造業」(白岡社長)に変わることも不可能ではないという。

 

圧倒的な生産性を実現

国内の金属加工業では、ほとんどの現場で日本製の工作機械が使われている。それだけに、欧州など海外工作機械メーカーにとって、日本は「最後の荒野」(白岡社長)と言われるほど、難しい市場になっている。

とはいえ、欧州は日本人よりも平均労働時間が短いながらも、高い生産性を実現していることは、よく知られている。製造業も例外ではない。

背景にあるのが優れた工作機械の普及。白岡社長は明かす。「よい意味で欧州は『怠け者文化』です。手を汚さず、思ったことをどう実現するかを考えます。だから自動化に長けているのです」。

■1カ月3000個が1日7000個

同社はイタリアやスイス、ドイツを中心に約20カ国の工作機械などを輸入。社内にエンジニアも在籍しており、立ち上げからアフターサービスまで一貫管理する。

例えば、イタリア・ブッフォリ社製の超多軸複合加工機は、最大1024軸を同時制御する。段取り時間も、他社製の同型が2~3日かかるのに対して、1時間以内。ある製品に至っては、1カ月3000個だった生産量が「1日」7000個にもなる。

「飛び抜けている機械しか扱っていません。私たちが世界ナンバーワンだと思ったものを売っています」と、胸を張る。

■国内回帰の切り札に

同社は1999年10月に設立。もともと、工作機械輸入部門を有する商社の営業事務職だった白岡社長。家庭の事情から転勤できず、当時からのパートナーとともに独立する道を選んだ。

「男社会」の体質が根強く残る国内ものづくり産業。とりわけ工作機械業界では珍しい女性社長として、幾多ものハードルを乗り越えてきた。

20年以上たった今では、取引先は120社超に広がった。「欧州製の工作機械は壊れないからこそ、当社も事業が継続できているのです」。

白岡社長は、製造業が国内回帰する切り札は、優れた工作機械にあるとみる。

「古い機械を稼働させ、台数を増やしたとしても、それだけ人手をかけていたら生産性は高まりません。賃金が安い国に流れてしまいます。圧倒的な高効率の工作機械にしたら、人知れず“もうかる製造業”が実現できるのです」と説く。

優れた工作機械を少しでも普及させることで、日本の製造業を変えていきたいと日々奔走している。

(2023年3月号掲載)