建築業のニシムラ(川崎市中原区宮内)は“100年住める家づくり”を目指し、環境に優しい断熱材・セルロースファイバーによる断熱施工「デコスドライ工法」の普及を進めている。たとえマイホームを購入しても、住宅ローン完済後には大幅に価値が下がっている現状がある中で「100年以上持つ家であれば、子どもや孫に価値ある形で引き継げます」(西村佳三代表)と力説。「暑さ」と「寒さ」を適切に調節できる断熱施工をすれば、建物の健康や住む人たちの健康も良い状態で保て、住宅の長寿命化にもつながるという考えだ。
断熱材・セルロースファイバーを普及
■断熱材でエコな家に
セルロースファイバーの原料はなんと新聞古紙。「再生材」でありながら、木質繊維特有の吸放湿性や防音性などを併せ持ち、次世代の断熱材とされる。無論、化学系材料の断熱材よりも製造時にかかる環境負荷ははるかに低い。ホルムアルデヒド・VOC(揮発性有機化合物)の放散試験においても無垢の木材と同様に「対象外」とされる。
ただ、西村代表によると、欧米では断熱材としての市場シェアは50%近くとするが、国内は3%程度。そのため、脱炭素社会が到来した現在では、一刻も早い普及が期待されている。このセルロースファイバーを断熱材として最大限に生かす工法が、同社が主力とする「デコスドライ工法」だ。
■冷暖房の使用も減少
同工法は、「乾式吹き込み工法」とも言われる。具体的には、断熱したい部分にホースを挿入し、セルロースファイバーを吹き込む。これにより、従来では手が届かない、屋根や天井などの細部まで、専用機で断熱材を充填。隙間からの熱損失を防ぐとともに、家全体に、防露・調湿性をもたらす。
「日本の気候は、とりわけ湿度との闘いです。梅雨の時期は湿気、冬には結露を防ぎます。湿度を調節することで、夏は涼しく、冬は暖かさが感じられて冷暖房をむだに使うことも減ります」と、西村代表は語る。
■住宅を子どもや孫に
同社に日頃寄せられる相談で多いのは、結露に関わる問題。リフォームしている建物が、冬場に天気もいいのに雨漏りがする。結露やカビで困っているなどの相談に対し、同工法を提案しているという。「機械を使って人の手で吹き付けをしていくので、技術も必要です。割高にはなりますが、長持ちする住宅につながります」(西村代表)。
「夢のマイホームを子孫にも残したい」と考える人は少なくないはず。そんな人たちの思いを具現化するため、西村代表らは同工法の普及に奔走している。