イタリアン漆喰に代表される「西洋左官」のパイオニア的企業が、川崎市高津区にある。丸紘が西洋の漆喰(しっくい)に魅せられ、日本で始めたのは30年以上も前のこと。模様のパターンは無限で、芸術性が高く表現豊かな西洋漆喰は、施工する職人によって、出来栄えが違う。同社はその西洋漆喰の技術をひたすら追求し、日本人の持つ繊細な感覚と融合させ「西洋左官」というジャンルを構築。川崎から全国へと発信している。
川崎から全国へ発信
古くから継承されている日本の漆喰(和漆喰)は、ムラがなく正確、平滑に仕上げるのに対し、西洋漆喰はそのムラを「個性」として模様のようにしていく。「どちらかと言えば、壁を漆喰で“描く”イメージです」と光宗一城社長は語る。
西洋漆喰の材料には、石灰岩や大理石の粉などが使われる。材料や色の組み合わせも無限だ。職人によっても技術や感性が異なるため、漆喰を塗った壁紙はいわば「唯一無二の壁」(光宗社長)となる。
設計事務所など発注元からイメージを聞き取り、何度も打ち合わせを経て、ようやく施工に入る。“カタログ品ありき”の大量生産の建材にはない世界だ。「それぞれの壁がオーダーメードに近いです」(同)。
そんな同社では、世界的な有名ブランドの日本店舗や著名人の住宅、高級ホテルなどの内装を担当。西洋漆喰は富裕層に好まれることもあり、コロナ禍でも大きく影響を受けることはないという。
人材育成にも注力。若い人材を定期採用し、職人として育てている。異業種からの転職組も採用する。現在抱える12人の「職人社員」は、平均年齢も30代だ。
技能継承もカギになり、今年1月には、地元・川崎市から市内最高峰の匠として認められる「かわさきマイスター」に、同社の綾部淳氏が選ばれた。
■国産漆喰材を共同開発
100%国産の西洋漆喰材を、塗料販売業のバービッシュ(川崎市高津区)と共同開発した。
西洋漆喰の材料は欧州からの輸入が占めているが、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で供給が滞っているため、今回、国内産の石灰を主原料にした漆喰材の開発に成功。「テクスチャーペイント」の商標権を持つバービッシュで今夏をめどに販売していく。