アンド化工(横浜市港北区新羽町)は、1枚のプラスチック板から、まるで金属のプレス加工のようにして、あらゆる形状の部品を仕上げる「板加工」を手掛ける。同加工は、プラスチック射出成形と比べると、金型の設計・制作コストが圧倒的に安く、納期も早いことから、少量多品種もしくは中量多品種に向くとされる。県内でも手掛ける企業は少ない。加えて、同社は板加工のみならず「総合プラスチック加工業」を標ぼう。「プラスチックと名が付くものなら、社内でほぼできます」(赤塚郁夫社長)と言うように、樹脂部品の機械加工から溶接、溶着など、あらゆる困りごとに対応する。
県内でも珍しく「板加工」に強み
■圧倒的な優位性
同社が得意とする板加工は、金属プレス成形と似ている。1枚のプラスチック板を仕入れ、熱で軟らかくした後に金型で成形していく。複雑な形状の場合、樹脂を圧縮空気で加圧し、金型の形状を写し取る「圧空成形」、もしくは樹脂と金型の間を真空状態にして、樹脂を金型に吸いつけることで成形する「真空成形」や木型を使用する「プレス成形」といった技術を用いる。
板厚はおおよそ1~10ミリ(形状により15ミリ)。アクリルやABS、ポリカーボネートといった樹脂材料のほか、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの付加価値材料まで対応する。岡山芳井工場(岡山県井原市)では、丸棒からの加工も手掛ける。
プラスチック成形の世界は「射出成形」が広く普及する。生産装置内にペレット(原料)を投入して溶融、スクリューを通じて金型に流していく方法だ。ただこれは、量産品にはマッチするが、少量多品種生産や短納期だと厳しい。なぜなら金型の設計・制作費用がかさみ、時間も要するからだ。
それに対し、板加工は「木型」か「アルミ型」を採用。「トータルコストが圧倒的に違います。設計変更にも対応しやすいです」と赤塚社長。過去には射出成形の20分の1の費用で済んだ案件もあったという。
■切削加工なども対応
工場内では、手のひらサイズから比較的大型の部品まで、年間1000以上の種類を生産。鉄道車両用の袖仕切りから路線・観光バスの仕切り、分析装置用部品、特殊車両用部品...。数えたらキリがない。また、成形だけでなく、樹脂部品の切削加工や溶接などの依頼も単発で受けることもある。
取引先は300社を超す。売上高の構成も特定の一企業に依存することもなく、見事に分散する。
同社の場合、町工場にしては珍しく、専属の営業職を数人置く。「町工場は黙っていても仕事が来るという、昔の感覚ではありません。セールスエンジニアとして、顧客に完璧な提案をすることを目指しています」
■社長は「環境をつくる仕事」
原則として社長が細かい指示を出さないのも特徴。営業現場の見積金額から受注金額の決定権は、すべて現場の責任者に一任する。「社長の仕事は、指示を出すことではありません。(働きやすい)環境をつくることだと思っています」と力説する。よい意味での放任主義だ。
そうした考えは、営業だけでなく生産現場でも同じ。社員一人一人が自ら考えることで責任感を持つようになり、定着率の向上にもつながっているという。