仙崎鐵工所(川崎市川崎区小田)は、製缶業界で他社が対応しづらい大型製品を手掛ける、創業91年の老舗企業だ。「精密製缶」を掲げる同社は、従業員17人中16人が職人・技術者で、このうち3人が川崎市経済労働局認定「かわさきマイスター」という高技能集団でもある。“大型一品物”の製造で独自の地位を築く。
30~40年の耐久性
製缶品とは、金属板や金属管を加工した容器や構造物を指す。同社は計測機器筐体やオゾン発生装置筐体、X線厚み計筐体など、最先端のインフラや産業設備の中核となる装置などを担う。
いずれも一品物。「半年間かけて仕上げる製品もあります」(沼りえ社長)という大物製品ばかりだ。加工だけでなく、設計から組み立てまでを自社で一貫して行う。
主力取引先は大手電機メーカー。インフラ関係も含まれるため品質基準は厳しく、メンテナンスが困難な環境下での長期稼働も想定されている。「本来であれば10年持てばよいようなものでも、30年、40年は持ち、壊れずに使えるような水準が求められます」(沼社長)という。
国内ものづくり産業では、人手不足解消や生産効率化のため自動化・ロボット化が進んでいる。だが大量生産ではなく一品物、しかも大型の製缶品となると自動化はできない。言い換えれば「人」がすべてになる。
同社の場合、ほとんどの社員が溶接の資格を持っており、「かわさきマイスター」たちも活躍する。「65歳なんて、まだまだ若いです。70歳を超える職人もハンマーを握っています」と、ベテラン職人の豊富な経験を最大限に活用し、技術を磨き続けられる環境を提供している。
かつて製造業は中小企業であっても海外シフトする流れがあった。しかし同社は時代に流されることなく、1934(昭和9)年の創立からものづくりを地道に続け、技能を継承している。
現在、大型の製缶品を手掛けられる同社のような企業は地域では珍しい存在となっており、案件も続々と舞い込む。
創業以来90年以上続けてこられた理由として、3代目に当たる沼社長は「お客さんに品物を気に入ってもらえるという、ものづくりの本業をしっかりとやってきたからではないでしょうか」と語る。
デジタル全盛時代にあって、同社が証明するのは職人の手技と経験に勝るものはないということだ。AIやロボットでは再現できない「職人の感覚」や「蓄積された技術」こそが、長きにわたって信頼される製品を生み出す源泉となっている。




