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「着るアート」発信 町工場とコラボのゴシック風 

Ziggy Vamp(ジギー ヴァンプ、東京都大田区南六郷)は「着るアート作品」をテーマに一点物の衣裳や、舞台装飾、グッズなどを製作販売する「危機裸裸商店(ききららしょうてん)」を運営する。延べ3000アイテム以上の作品は帽子やコルセット、バッグなど幅広く、立地する大田区の「町工場」と連携した作品づくりも進めている。

海外からも注文拡大案

社長でありデザイナーの後藤ききさんは、帽子の会社でデザイナーを経験して独立。2002年に原宿の同潤会アパートで危機裸裸商店を開店し、憧れた映画の登場人物に「なりたい自分」のためのユニークな衣裳作品を製作した。

当時は輸入でしか手に入らなかったコスチュームのセレクトショップは注目を集め、渋谷や新宿に4店舗構えるまでに成長したが、多忙で自分の物作りができなくなったため、18年に大田区の秘密基地のような店舗に移転し、作品作りに集中した。

住宅と町工場が混在する大田区南六郷の店舗は、謎めいた木のドアを開けて店内に入り簡易エレベーターで地下に降りると、一面後藤さんの作品で埋め尽くされたテーマパークのよう。

ホームページでのネット販売も展開するが、全社売上高の9割はこの店舗に来店する個人客の売り上げ。残り1割のネット販売は海外からの注文が拡大中という。

大田区の町工場との連携は、「ゴシック」の世界観の表現をテーマにしている。ゴシック文化は、12世紀欧州のゴシック建築やゴシック美術を背景として、19世紀英国の「ドラキュラ」などのゴシック小説の世界観から発展。死や闇、退廃的なイメージを表現するサブカルチャーの1つのジャンルとなっている。

後藤さんは幼少期からヴァンパイアやゾンビなどのホラーな世界観や、ゴシックファッションに憧れたという。いつかそんな世界の「憧れの人物になれる」アイテムを本格的に作りたいと思い、「ゴシックデザイン×大田区工場」の新しいアイテムを提案した。

これまでのコラボ作品は、精密な小型ばねの技術を生かした「ゴシックリップ」や、水族館の水槽など美しいアクリル加工で実績のある町工場と作り上げた人形ケースなど、どれもユニーク。

家具としての美しい棺は、木工やウレタン加工のプロと作り上げた自信作だ。「ものづくりの情熱はジャンルを超えて一緒」(後藤さん)と話している。

(2024年12月号掲載)