住まいの産業 / ライフサイエンス

「犬の力」がつなぐ社会 就労支援事業所と一体のカフェ

JR南武線稲田堤駅(川崎市多摩区)の駅前にオープンした「ANELLA CAFE(アネラカフェ)京王稲田堤店。保護犬ふれあいカフェと、就労継続支援B型事業所を一体運営する。ボランティア運営が多い保護犬猫活動で、寄付に頼らない収益化の仕組みを持ちながら社会貢献する新しいモデルとしてスタートした。社会貢献と収益確保の両立という経営課題に、「犬」という共感軸を置いた解決策として注目されそうだ。「障がいのある方たちが楽しく働く場にもなっています」と、同店を運営するTEKOTEKO(テコテコ)の伊藤喜美子社長は話している。

寄付に依存しない事業モデル

ヨガインストラクターだった伊藤社長は、子どもの頃から犬に囲まれて育った。「好き」を仕事にしたいと事業転換を模索する中で、障害者に就労の機会を提供するB型事業所で保護犬たちの世話をする取り組みがあることを知った。

「大好きな犬と関わり、社会に役立つ仕事をしたい」との思いで一念発起し、2024年8月に同社を設立。DT(東京都世田谷区)が展開する「アネラカフェ」のフランチャイズ(FC)に加盟。同社のサポートを受けながら、2025年7月、「京王稲田堤店」オーナーとして独立を果たした。

現在、併設された就労継続支援B型事業所には、支援員5人のもとで12人の利用者が通所している。「これまで他の事業所に通っていたものの、この仕事が面白そうだったから来るようになった人もいます」と伊藤社長。清掃や単純作業が多い一般的なB型事業所とは異なり、「犬猫の世話」という"好き"を仕事にできる環境が魅力だという。

収益源は二つ。B型事業所として最大20人までの利用者を受け入れ、この部分に国の補助がある。一方、カフェの入場料やグッズ販売、カフェ内に設けたトリミングサロンの売り上げがあり、これらは保護犬の医療費や活動費に充てられている。

カフェの利用料金は30分で大人1000円、子ども・シニア・障害者は500円。中でもトリミング料金は、他店と比べ比較的安価に設定した。

「トリミングは犬や猫が健康に生活するための必要なケアです。高くして行けなくなり皮膚病になることがないよう、適切なタイミングで利用してもらえる価格にしています」(伊藤社長)。

オープンして間もないが、こうした効果は着実に表れている。1カ月で約80組300人以上が来店。家族連れから一人客まで幅広く、近隣のペット飼育禁止住宅に住む「飼いたいけれど飼えない」という人たちも訪れる。

何より、働く利用者たちの表情が明るくなったことが大きな変化だと伊藤社長は感じている。

「犬の力ってすごいです。犬が好きという人たちが働きに来てくれて、お客さんも犬好きの人が来ます。利用者さんも犬のために何かしたいとモチベーション高く働いてくれる一方、何かあったときも犬に触れているだけで癒やされます」と力を込める。

寄付に依存しない収益構造と、関わる全ての人が幸せになれる循環型の仕組み。同店が描く未来は、福祉と動物愛護、そして地域社会をつなぐ新しい形のソーシャルビジネスのあり方を提示しているようだ。

(2025年9月掲載)