住まいの産業 / ライフサイエンス

「柿渋銀イオン」でコロナ禍乗り切れ

柿渋と銀(Ag)を掛け合わせた成分は、極めて高い抗菌・抗ウイルス効果を出す。持続性もある。南信産業(横浜市港北区日吉本町)は、この効果にいち早く着目し、関連製法・加工技術を世界で初めて開発(特許取得済み)。その技術を使ったマスクやタオル、噴霧液、住宅抗菌塗料などを続々と開発する。今では主力事業が従来の建築塗装から、抗菌・抗ウイルス関連事業に置き換わり、ウィズコロナ時代にマッチした企業へと成長した。

驚異のパワーで抗菌ソリューション

■固着化に成功

銀イオンは、強い抗菌力があり、カビや大腸菌、ウイルスなどを不活化させることで知られている。ただ、せっかくの効果があっても水に溶けて流れやすく、定着化しない課題がある。

それに対し、柿渋に含まれる成分(タンニン)は、抗菌・抗ウイルス効果のほか、銀などの重金属への強い固着性がある。そのため、同社は「強い抗菌力がある銀イオンに対し、柿渋成分を固着させれば、銀イオンの課題を克服し、相乗効果が発揮できる」と考え、10年以上も前から関連技術の開発を進めていた。

そして独自技術で配合に成功。安全性もある「柿渋銀イオン」として、噴霧液にしたり、マスクやタオルなどの繊維に染み込ませたりと、実用化できるレベルに育てた。

その技術が世の中の注目を集めることになる。現在のコロナ禍だ。同社はいち早く柿渋銀イオンの用途開拓を進め、今治のタオルメーカーとコラボし抗菌タオルや業務用抗菌布巾を開発したほか、繰り返し洗っても効果が続く抗菌仕様マスクなどを商品化。

その抗菌性能は高く、JIS規格では目安として静菌活性値が「2.0」以上であれば抗菌防臭効果が有効とされるところ、同社製品は「5.6」という驚異的な数値をマークした。

県立産業技術総合研究所(KISTEC)に委託した試験でも、柿渋銀イオンにより、新型コロナウイルスの飛沫核が99.9%不活化することも確認した。

■水環境改善も

現在、さらなる用途開拓を進める。その一つが養殖や飼育分野での水環境改善だ。

活性炭や珪藻土、シリカゲルのような「多孔質材」に柿渋銀イオンを染み込ませることで抗菌処理を施し、水中でも抗菌活性が失われにくくなる技術を開発した。

宮路勝照社長は説明する。「水槽に残ったえさや魚の排泄物がたまると水質の悪化につながります。抗菌処理をした活性炭を敷設すれば、2週間に1回だった水槽清掃が2カ月に1回程度で済みます」。今後は国内の活性炭メーカーとの実用化に向けた開発も進める。

建築塗装業から抗菌ソリューション企業へと変貌を遂げた同社。「クリーンで安心安全な社会づくりに貢献したいです」と、80歳を超える宮路社長は意欲満々だ。

(2022年9月号掲載)