コロナ禍で3分の1以下に激減した社員数が、数年でコロナ以前を超える体制に復活した。絶体絶命の危機に直面した高速路線バス事業のベイラインエクスプレス(川崎市川崎区塩浜)の秘密は、「脳ドック義務化」や「酸素カプセル設置」「写真撮影ポイント制度」など、業界の常識を覆すユニークな健康経営にあった。深刻なドライバー不足が業界全体を襲う中、「日本一健康なバス会社」を掲げる同社の革新的な取り組みは、人材確保に悩む異業種の中小企業からも注目を集めそうだ。
社員の健康管理と交流促進を徹底
2010年に大阪で創業した同社は、川崎との2拠点で事業を展開している。
同社が最も力を入れるのは、徹底した健康管理。全社員に入社時の脳ドック受診を義務付けるほか、年2回の健康診断やSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査も実施している。
森川孝司社長は「運転手が健康でなければ事故につながります。安全運行のための必須条件です」と強調する。
職場環境の充実にも注力する。社内には酸素カプセルを設置するほか、「社内コンビニ」も運営している。
ユニークなのが、新入社員に既存社員との写真撮影を促すポイント制度だ。撮影に参加した社員双方にポイントを付与し、Amazonギフトカードなどと交換できる仕組み。遊び心のある制度の真の狙いは、社員同士のコミュニケーション促進だという。
安全面では最新技術を積極導入する。フロントガラスのセンサーで車線逸脱や前車との距離をモニタリングし、乗務レポートの作成により運転技術を数値化。データに基づいた安全運行管理を実現している。
こうした取り組みの効果は数字にも表れている。コロナ禍で約70人から24人まで激減した社員数は、現在78人までに回復した。
2025年1月には中小企業では珍しい広報部署を新設するなど、企業価値向上を目的とする情報発信にも意欲的だ。
同社は2012年12月、中日臨海バス(三重県四日市市)とWILLER EXPRESS(東京都江東区)の合弁会社として設立された。
現在、関東から愛知、福井、島根、伊勢、神戸の6路線で毎日18便を運行。高速路線バス7割、観光バス2割、企業向け送迎1割の事業構成となっている。
強みの一つが、営業所から羽田空港までの好立地にある。チャーター料金が距離と拘束時間で決まるバス業界において、空港からの近さは大きな競争力となるからだ。
企業向け送迎では羽田から横浜、川崎方面のホテル送迎を24時間体制で手掛け、ナガシマスパーランド(三重県)行きなどニッチな路線も運行している。
今後は旅行業者や羽田空港周辺ホテルとの連携強化を目指す。森川社長は「羽田空港一帯のホテル送迎といえばベイライン、と言われるような存在になりたいです」と意気込んでいる。






