住まいの産業 / ライフサイエンス

「小さなデベロッパー」街を元気に

不動産業のフオベル(川崎市多摩区登戸新町)がホテル事業に進出した。小田急線・百合ヶ丘駅近くにビジネスホテル「FORBELL STAY YURIGAOKA(フオベル ステイ 百合ヶ丘)」を開業し、ビジネス客だけではなく観光客も対象にした。多角化経営を進める同社は、先代から継承したダスキンのフランチャイズの運営を手掛けるだけでなく、庭の手入れや、ネイルサロンなども展開。「小さなデベロッパー」(平井勇一社長)として、枠にこだわらず、時代のニーズに応じた新規事業を次々と立ち上げ、バランスを保ちながら成長を遂げる。

多角化経営で時代のニーズ対応

■事業転換を決断

同社の業容を一言で表現するのは難しい。「大手企業のように街全体をつくっていくような大規模なものではないですが、山林や古い家、古アパートを購入して“加工”することで商品化。販売することで、地域密着のデベロッパーのようなことをしています」(平井社長)と説明する。

もともとは先代がダスキンのフランチャイズ加盟店として出発した企業。娘婿であり、18年前に事業を継承した平井社長は大手デベロッパー出身。在籍時はタワーマンションの企画やマンション用地の仕入れなどを担当。若くして管理職にも抜てきされ、第一線で活躍していた。

そんな折、義理の父である先代から事業承継を打診された。最初は断るも、何度も何度も口説かれるうちに「一組織の歯車として働くより、自分の手で事業を切り開くのであれば...」と思い直し、入社を決意した。

だが、いざ入社すると予想外の状況だった。

ダスキンのビジネスモデルは一度の顧客開拓で継続的な収益が得られる「サブスク型」の仕組み。顧客数が一定に達すれば安定した経営が見込めた。しかし、時代の変化とともに人々の生活スタイルも変わった。どんな事業でも永遠に続くものではない。年々緩やかに下降する業績を目の当たりにした平井社長は事業転換を決断した。

■事業のシナジー効果も

最初に始めたのは、庭の管理と花・観葉植物などの販売レンタル事業だった。次の新規事業として真っ先に浮かんだのは、自身が長く身を置いてきた不動産だった。

不動産仲介業を始め、仕入れ販売まで広げ、今では主力事業にまで成長した。2020年には主婦人材らの提案でネイルサロンも開業している。

そして今回、百合ヶ丘にビジネスホテルを開業、ホテル運営をスタートさせた。事業再構築補助金を活用し、コロナ禍に閉鎖したホテルを買収、近代的なホテルとしてよみがえらせた。全28室あり、全室にダスキン製の高機能シャワーヘッドを導入するなど、他事業とのシナジー効果も見込む。

同ホテルは、新宿や渋谷をはじめとする都心から電車で約30分、江の島や箱根湯本などの観光地からは約1時間の距離に位置。また、隣接する新百合ヶ丘駅からは羽田空港や成田空港への直行バス、さらにはディズニーランド直行バスも出ている。

「ビジネスやレジャーの拠点としては絶好のロケーションで、競合となるホテルはほとんどないです」という。

時代とともに変化するニーズに対応するため、新規事業の積極的な展開により、ニューノーマルに対応できる会社を目指している。

(2024年2月号掲載)