地域の話題のお店

「備蓄米」の常識変える

横浜市港北区のショッピングモール「トレッサ横浜」に出店する精米店、すえひろは、全国から取り寄せた産地直送米を好みに応じて精米し、鮮度が落ちない真空加工を施して提供する「オリジナル備蓄米」を販売。ヒットを飛ばす。昨年の約50倍となる売れ行きだ。コロナ禍での自炊ニーズの高まりや、防災意識の高まりが追い風になっているが、特殊な真空加工技術で「お米を新鮮なまま、おいしく食べられます」(荒金一仁オーナー)としており、口コミでも広がった。

1年中おいしく提供

同商品は、銘柄や量、精米具合(玄米、標準精米、無洗米など)といった好みを伝えると、店内で精米し「マイ備蓄米」として提供する。その組み合わせは1000パターン超。

商品は、鮮度を保つために「冬眠に近い状態」(荒金オーナー)とする真空加工を施す。新米の時期であればおいしさを保つ。

備蓄米といえば味が落ちるイメージがあるが、それを覆した。同店では、食品工学の権威、京都大学・満田久輝名誉教授が考案した「冬眠密着包装」を採用。食用炭酸ガス(二酸化炭素)を入れながら真空状態にすると、長期間鮮度が落ちにくくなる技術だ。「備蓄米として長期保存する用途のみならず、日常の食生活でも新米のおいしさが1年中味わえます」。

東日本大震災以降、防災意識の高まりから、食品をストックしながら徐々に消費する「ローリングストック」が各家庭に普及する。ただ、災害時でもおいしいものを食べたいというニーズもあり、追い風になっている。最近では、企業からの引き合いも出てきたという。

■ベンチャー型事業承継

もともと、父が酒店を営んでいたが、事業承継を機に米穀店へと事業転換を果たした。今で言う「ベンチャー型事業承継」だ。

以来、個人向けから、飲食店や幼稚園などの業務用までを販売し、順調に拡大。2019年10月には、米屋としては日本初とされるショッピングモールにも出店した。しかし、間もなく新型コロナの感染拡大が起きた。

出店で大型投資をしたものの、ショッピングモールへの来客は激減。業務用需要も飲食店の休業を受けて落ち込んだ。苦境に立たされる中、信金担当者と二人三脚で打開策を模索。自社の強みを最大限に生かせるとし、オリジナル備蓄米を商品化した。

(2022年10月号掲載)