金属加工・樹脂加工・その他加工

「キャンパー社長」の目で生んだ商品

金属加工業、MEYKOU(川崎市高津区久地)の宇野光二郎社長が手掛ける、町工場発のこだわりのオリジナルキャンプブランド「M.B.K」が注目を集めている。コロナ禍でキャンプブームになる以前から商品を続々と開発。いずれも「キャンプ好きによる、キャンプ好きのための商品」で、愛好家たちの間でも広がっている。中でも「M.B.Kグリルpad」は、第20回川崎ものづくりブランドにも選ばれている。

精密板金を生かし独自ブランド

■板金一家に育つ

2017年8月に設立した精密板金業。銀行のお札を数えたり、偽札を判別したりする機器などに組み込まれる金属加工部品を手掛ける。精密板金業としては歴史が浅いながらも、宇野社長はこの道で四半世紀というキャリアを持つ熟練職人だ。

もともと祖父が精密板金業を営んでいた。宇野社長自身も「朝目覚めると板金の音がしている家で育ちました。小さい頃は、よく鉄くずで遊んでいました」と振り返る。

祖父から始まった会社は、父、そして兄が継承。弟である宇野社長も手伝っていたが、会社が事業拡大のために川崎から茨城県に移転することとなった。

しかし、川崎育ちの宇野社長は、地元とのつながりが深く、取引先も存在したため、事業の一部を引き継ぐ形で川崎に残り「MEYKOU」を設立した。

社名である「MADE BY KOUJIRO(メイド バイ コウジロウ)」は、宇野光二郎社長の名前に由来する。これは妻のアイデアだったという。

精密板金技術を生かし、会社設立時から着手しているのがキャンプ用品の製造販売事業。「幼少のころからアウトドアが趣味」と言う宇野社長は、「自分の好きなものを自分の思い通りに作ってみたい」という思いがあった。

社名の由来と同様、「M.B.K」ブランドとしての製品群は“メイド・バイ・コウジロウ”を意味する。

これまでにたき火台や炭火台、網やBBQフォークなどを商品化、中には特許を取得したものもある。「知財対策を行っていたことで、ブーム到来の時にライセンス収入につながり、コンサルティングやコラボの依頼にもつながっています」

■将来の事業拡大も

今回、川崎ものづくりブランドに選ばれたのは携帯タイプのたき火台「グリルpad」。7つのパーツで簡単に分解・組み立てができる工具不要の組み立て式だ。

「人速対応・精巧納品」がスローガン。同社の場合、営業時に取引先から「(単価が他社より)2割高い」と言われても、しっかりと受注につなげる。

その理由として「高くなればその理由をしっかりと説明しています。また『受注から納品まで“最速”でやる』という姿勢も差別化です」と明かす。

軽量化とともに全てのパーツの厚さをわずか1.5ミリメートルで統一。熱のゆがみを考慮した設計で繰り返し使用できる。コンパクトながらも耐久性があり、洗ってもさびにくいため好評だという。

「好きだからこそキャンパーが欲しいものや、楽しいと感じてもらえるポイントが分かります。“同じ目線”でものがつくれます」と語る宇野社長。

今後も、愛好家目線の逸品を続々と開発し、キャンプ用品事業の拡大を見据える。好きこそものの上手なれ。まさにその言葉が当てはまる。

(2024年1月号掲載)