クリーニング業界にイノベーションを─。クリーニング5店舗を運営する髙瀬ホールディングス(川崎市中原区下新城)は、新業態となる「洗濯コンビニ」を展開する。「家庭から洗濯機をなくしたい」との目標を掲げ、コロナ禍を契機に大胆な事業再構築に着手。“店舗+コインランドリー ”の併設型店舗や、非対面のロッカー型窓口を設けたりするなど、利用者のライフスタイルに合わせ、あらゆる手段で洗濯物を受け入れる。新たに始めたのが「究極の宅配クリーニング」(髙瀬伸社長)とするサービスだ。タオルや下着類、スーツまで、無差別で点数制限なしで専用袋に詰めて出せるものだ。常識にとらわれない数々のサービスで、市場縮小の一途をたどる業界内で成長を続ける。

縮小市場も独自サービスで打破

■時代の流れに乗る

いわゆる“街のクリーニング屋さん”に代表されるドライクリーニング市場は、年々厳しさが増す。テレワークの浸透はもちろんだが、ビジネスカジュアルやノーアイロン衣類の普及なども逆風だ。コロナ禍での行動制限で来店客が減ったことも大きい。

こうした中、同社が事業再構築の一環として始めたのが店舗内でのコインランドリーの併設。クリーニング店とコインランドリー。相いれない組み合わせに思えるが、髙瀬社長は「どのような形態であっても、『洗濯する』というゴールは同じです。ならば、受け皿を増やすことで、あらゆるニーズの囲い込みが可能になります」と説明する。

さらに、コインランドリーと同様、非対面で24時間365日利用できるロッカー型の窓口も置いた。

現在、同社に洗濯を出す際は、「店舗窓口」「コインランドリーセルフ」「店内ロッカー」「宅配」が選べるようになっている。「時代とともに、服やライフスタイル、家族の単位が変わっています。クリーニング業も時代の流れに乗っていく必要があります」

■家事からの解放

もう一つの強みとするのがタオルや衣類、下着類といった家庭用洗濯物の洗濯代行サービスだ。保健所の認可を取り、自社工場内で展開する。

利用者はプライバシーが守られた専用袋に洗濯物を詰め込み、集荷してもらうか店舗に持ち込む。当日昼までの受け付けで、夕方には引き渡す。工場内での作業は女性スタッフが担当する。

「ドライクリーニング市場は縮小していますが、その分、家庭用洗濯のニーズは大きくなっていると感じています」と髙瀬社長。この先、家庭で洗濯乾燥機が普及しても、たたむことまでは自動化できない。

家事の中でも負担が大きい洗濯を、代行サービスによってなくせば、女性の社会進出を促したり、共働き世帯のゆとり時間の創出などにつなげたりと、さまざまなメリットが生まれてくるという。

■究極のクリーニング

全国の宅配事業者と連携し「究極のクリーニング」と位置付ける新事業も始めた。専用袋に、ドライ・家庭用問わず、洗濯に出したいあらゆる物を詰め込んで、コンビニ窓口に出すか集荷してもらう。全国どこからでも利用できる。

「通常の宅配クリーニングは、衣類に応じて料金体系が異なり、分かりにくいです。最初からその壁をなくし、一律にしました」。マンション入居者へのオプションサービスなどにも使えるとしており、今後は法人向けにも販路を広げていく。

「当社のミッションは『家庭から洗濯機をなくす』ことです。そのためには“洗濯のコンビニエンスストア”になる必要があります。業界が縮小しているからこそ、思い切ったことができます」と髙瀬社長。コロナ禍をきっかけに、街のクリーニング屋さんから「洗濯コンビニ業」へと進化を遂げる。

(2023年7月号掲載)