金属加工・樹脂加工・その他加工

熱処理の前後、数値で見える化

金属熱処理業、武藤工業(大和市下草柳)は、熱処理の“ビフォーアフター”を見える化する新サービスを始めた。熱処理後に素材がどのように変化するかを3次元測定機により数値で示す。一方、ステンレス熱処理の分野では「鋭敏化測定機」を使用し、熱処理後に素材が錆びやすくなるかも数値で表す。熱処理効果を見える化することで、設計や後工程に反映できるほか、納品後のクレームリスクの防止にもつなげてもらう。業界でも珍しい試みという。

武藤工業、3次元測定機など導入

熱処理は、素材を1000度C以上の高温で加熱し急速に冷やすため、金属などの素材は微妙に変化する。同社によると、熱処理後は目に見えない100分の1ミリレベルで素材が膨張したり、縮んだりする。

ただ、より精密な部品を熱処理する場合、あらかじめその変化を知っておくと、設計などにも反映しやすいという。

そのため、これから熱処理したい素材のテストピース(試験片)を同社で預かり熱処理。そして新規導入した3Dスキャナー付き3次元測定機により、ビフォーアフターを計測していく。同サービスは今のところ無償で受託。プレス金型や精密部品業界などからの依頼を受け付けていく。

■鋭敏化も示す

ステンレスの熱処理分野では、熱処理後に錆びやすさの度合い(鋭敏化)も測定する。

熱処理後の素材に対し、腐食液を垂らして電気を通し、その流れで金属の状態を分析。錆びやすさの度合いを数値で示す。

「一定の熱処理をすると、錆びないはずのステンレスが錆びるようになります。ただ、このことは世間ではあまり認知されていません。測定により(熱処理後に納入した部品が)一定期間後に錆びるリスクが分かるので、納品時に伝えられます」と中村正美・企画開発部部長。対策が必要な場合は、錆びにくくする「固溶化熱処理」も同社で請け負っていく。

(2022年4月号掲載)