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つながり深める「オンライン運動会」

テレワークの普及により、社内でもリアルなコミュニケーションの機会が減っている中、「オンライン運動会」が注目されている。開発したのは、運動会屋(横浜市港北区高田西)だ。運動不足やコミュニケーション不全、モチベーションの低下…。継続的なテレワークによる弊害を解消してもらおうと始めたものだ。最初の緊急事態宣言が解除されたばかりの2020年5月から現在までの開催数は累計200回。今や日本のみならず米国や南米など海外9カ国にも広がりを見せている。

運動会屋が開発、リモート時代で普及進む

制限時間内に何枚の靴下をはけるかを競う「くつした早履き競争」や「借り物しりとりリレー」…。たとえオンラインであっても、全員が汗をかき楽しめる多種多様なアイデア競技が用意されている。いずれの競技も同社が考案し、検証して“商品化”している。

企画段階から完全オーダーメード。「部署内でコミュニケーション不足を解消したい」「モチベーションを高めたい」など、目的をヒアリングした上で、オリジナルのオンライン運動会に仕上げる。終了後はオンライン懇親会も用意できる。

そもそも「運動会」は、明治時代から続く日本の文化。昔から学校や地域社会では、運動会を通じてコミュニケーションを深め、協調性やチームワークを培ってきた。

「確かに『会話』もコミュニケーションですが、運動会の場合、参加者たちの共通体験を通じて互いのエネルギーに触れたり、協力しあったりしてリアルなコミュニケーションが可能になります」と、米司隆明社長は力を込める。対面が制限され、コミュニケーションが希薄になりつつある今だからこそニーズがあるという。

■ピンチがチャンスに

2007年5月に川崎市高津区で創業した。企業や団体に対し「組織を強くするための運動会」をプロデュース。企画から会場の手配、運営、撤去に至るまでをワンストップで提供する。企業規模や業種を問わず普及し、米国やインドなど、海外にも進出してきた。

だが、成長を続けた矢先に襲ったのが新型コロナウイルスの感染拡大。接触や密を生む運動会は敬遠された。キャンセルが相次ぎ、遂にはゼロになってしまった。終息も見えない。「これからどうするか、みんなで話し合いの日々でした」(米司社長)と苦悩したが、知恵を絞り、オンライン運動会を編み出した。

手探りながら始めたものの、実際にやってみると好評だった。コミュニケーションを深め、チームワークを強くする運動会は、たとえオンライン形式であっても、人とのつながりが希薄になりがちなリモート時代にはもってこいだった。

世界にも広がった。米国や南米のみならず、アフリカのルワンダでも開催された。コロナ前のリアルでやっていた運動会の開催回数にも近づき、巻き返しを図っている。

運動会を通じて、人と人がつながり、それが絆となり、やがてコミュニティーの形成に発展するよう、コロナ禍での挑戦は続く。

(2022年4月号掲載)