金属熱処理業の武藤工業(大和市下草柳)が、熱処理技術の基礎知識を幅広く知ってもらおうと、オンライン「熱処理勉強会」を開催している。専門用語が多く、独学にはハードルが高いとされる熱処理だが、同業他社も含め幅広く受け入れており、受講生も全国に広がる。同社にとってはブランディングになるだけでなく、熱処理への理解を深めた技術者を増やすことで「地域の熱処理業界のレベルを上げていきたい」(佐藤卓弥社長)との思いもあるようだ。
武藤工業、全国から受講者集まる
1989年9月から続けており、これまでに350人の卒業生を送り出した。昨年からはコロナ禍により急きょオンライン型に変更した。
1講義90分を月3回、10カ月かけて学ぶ。勉強会を始めた当初は近隣の同業者が中心だったが、今では東北から九州まで、全国から参加。メーカーの設計担当者や設備販売業者など、さまざまな顔ぶれが学んでいるという。
同社によると、熱処理は多くの部品に欠かせない工程で、機械加工や仕上げ加工にも影響する。しかし、初心者が基礎から理論的に学べる教育プログラムは、なかなか存在しないという。
■本業への相乗効果も
木村栄治・材料化学研究会熱処理部会長(技術顧問、元東京大学先端科学技術研究センター研究員)が専任講師となり、ゼロから基礎知識を習得できるようカリキュラムを工夫した。
木村講師は「(熱処理の)設備操作だけなら2~3年で身に付きますが、そもそも理論的に分かっていなければ、あらゆる材料に対応できません。日本語が分からず、古文や漢文をやるのと同じことです」と説明する。
実際のカリキュラムでは、熱処理や金属材料の基礎から始まり、含有成分や対摩耗性、対衝撃性、鋼材に与える影響などを学んでいく。
一方、同社では勉強会の開催を続けることで、本業との相乗効果も見込む。佐藤社長は「ブランディングとしてやる側面もありますが、当社から情報を発信するので、熱処理で何かあった時には相談に来てもらえます。将来的な受注にもつながります」と話している。