日本大学工学部発の環境ベンチャー、e6s(エシックス、横浜市西区みなとみらい)が、排泄物の液体をろ過し、洗浄水としてリサイクルできる電源不要の循環トイレシステムを開発、現在実用化を進めている。災害時などの使用を想定。独自のろ過装置により、排泄物を「固形物」と「液体」に分離。液体をフィルターできれいにしていく。断水で水が使えなくなった際でも「自立型の水洗トイレ」として継続使用できるようになるという。

フィルター活用の自立型トイレ実用化

「トイレは命を支える社会基盤です」と高波正充社長。実用化する同システムは、装置内に二つのフィルターを構成。汚水をまず第1フィルターで固形物と液体に分離した後、固形物をフィルターで巻き取り、液体は第2フィルターに入りろ過。そこでアンモニアなどの悪臭や大腸菌が検出されないレベルに浄化し、タンクに戻す。そしてトイレの水洗時に再利用する仕組み。

1日に50~100人の利用を想定した公共施設用と、家族5人を想定した家庭用の2タイプを開発中だ。約1週間程度使用でき、フィルターを交換すればその後も使えるという。

開発のきっかけは、共同開発パートナーである中野和典・日大工学部教授が東日本大震災時、住民たちの長期避難生活を目の当たりにしたこと。

「トイレが原因で起こる問題を解決したい」との思いから、トイレ循環システムの研究を始めたという。その研究成果を事業化するために2021年4月に同社が設立された。

「年々自然災害が増える中、1日でも早く完成させて世の中で使ってほしいです」(高波社長)と話しており、現在実証実験を進めている。

なお、技術シーズの社会実装化助成金「はまぎん財団Frontiers」にも採択された。

(2022年10月号掲載)