金属加工・樹脂加工・その他加工

ねじ業界の世界ランカーへ

ねじ業界の世界ランカーを目指す-。締結部品製造、ミズキ(綾瀬市小園)は世界市場に挑む。従業員数50人の企業だが、すでに海外売上高比率は7割を突破。国内では縮小の一途をたどるねじ業界にあって、2017年11月には新工場を稼働させたほか、誰もが知る米国メーカーからスマートフォンの精密部品生産も受注。成長を続けている。たかがねじ、されどねじ―。“世界で通用する企業”を実現していくため、同社が重視するのが、毎年億単位にもなる締結部品の生産量の中でも、不良1本も見逃さないモノづくりだ。

不良ゼロのモノづくり

精密ねじや異形ねじ、シャフトといった締結部品の専業。国内ねじ業界は、大手企業が海外生産シフトを加速させたことなどで市場が縮小。価格競争も逆風となっている。同社の水木太一社長によると、今のねじ1本当たりの価格は、おおよそ25銭程度。以前と比べると10銭ほど下がっているという。

こうした中で、以前から模索したのが“脱国内市場”だった。海外工場を設けるのではなく、国内生産したねじを海外に輸出するやり方だ。しかし、大手メーカーが現地調達できる製品を作っていても分が悪い。そこで着目したのが海外市場でもニッチな分野への参入と、ねじ1本の不良すら許さないモノづくりの実現だった。

現在、同社では海外生産する日系メーカーなどに対し、デジタルカメラの締結部品やハードディスク駆動装置(HDD)部品などを供給する。どれも部品に対して高品質が要求されるハイグレードモデルに的を絞っており、精密かつ特殊な形状のねじもある。同じデジカメでも量産品よりも市場としてはニッチだが、現地企業では勝負できない土俵になる。

グローカル戦略に活路

■秘訣は掃除にあり

「海外では、めっきの色がわずかに違うだけで不良品になります。世界で勝負するには、まずは品質です。あとは、その品質を証明する資料を出せるかです。面倒くさいと思うことでも、愚直にやることが大切です」と水木社長。

不良ゼロの高品質を実現するため、工場では画像選別機などを入れているが、効果が高いのが「掃除」だという。社内では毎週水曜日、総務や管理部門も関係なく社員総出で生産設備の清掃をしている。20分ほどかけて、それこそ工作機械の内部まで隅々にきれいにする。

「3年ほど前、不良が散発したことがありました。1件の不良ならしっかりとした原因究明が大切です。が、不良がばらばらに発生するような異常事態が生じたら、できることは全部やる姿勢、基本に戻ることが大切なのではないかと考えました」。

■言葉の壁は問題でない

一方、海外でのコスト競争に戦えるようにするため、高コスト体質の日本企業にありがちな「設備固定費」にも目を付けた。高価な新品の設備を購入しなくても、既存設備を自分たちで改造。生産効率の向上とともに設備費を圧縮させた。

海外企業とのやり取りはほとんどが英語。しかし、水木社長は「言葉の壁はそれほど問題ではない」と断言する。「当社では英語が流暢に話せる人間はごく一部です。今は支援機関や翻訳会社などもありますし、その気になれば何とかなります」。

地域で生産し、製品をグローバル展開する同社の「グローカル」な取り組み。今後の中小モノづくり企業がやるべき方向性を示しているのかもしれない。

(2018年7月号掲載)