カットランドジャパン(東京都大田区西六郷)は、溶接の接合部分にできる盛り上がり「ビード」を自動で研削する装置「SE・サンダー」を拡販する。ビードを小型の研削装置が自走して削り取る装置で、原子力発電所の廃炉作業に参加して蓄積した遠隔操作・自動化技術を応用した。人手不足に悩む造船、土木・建築などで大型構造物の溶接現場作業を効率化する。
原発廃炉の遠隔操作を応用
「SE・サンダー」は、本体と作業場所のガイドとなるレールで構成される。レールは厚さ1.5ミリの金属製。小さな四角い穴が直線方向に並んでおり、板ばねのようにたわむため、対象物が直線部でもボイラーの外周のような曲面部でも設置できる。
研削装置の本体は、リンクとばねを組み合わせたアームでレールに装着され、裏側の中央にある歯車がレールの穴にかみ合って進んでいく。複雑な制御機構がなく、研削の砥石(といし)も電気モーターではなくエアー(圧縮空気)で回すため、本体が8.6キロと軽量で扱いやすい。レールは1メートル単位で作業に合わせて用意し、着脱は磁石固定式と吸盤方式がある。
溶接ビードは通常、美観の維持や引っ掛かりをなくすため、作業後に削り落とす。大型船舶の建造や橋梁、洋上風力発電のポール建設などでは、ビードの除去が高所作業などで危険なうえ、夏場には対象物が高温になり、作業環境が劣悪な中での手作業を強いられていた。
その点、同装置は、歯車を動かす電源コードなどのケーブルを標準で10メートル装備しており、レールを増設すれば左右最大20メートルの範囲を無人で研削できる。価格はレールの長さなど顧客の指定する仕様により数百万円。
同社は2004年設立の省力機器メーカーで、社長を含め4人のスタッフは全員技術者。当初は原発用に配管の自動切断装置を供給していたが、東日本大震災で全国の原発が停止したため、廃炉作業用のロボットアーム開発に事業を切り替えた。
放射能の影響を受けやすい電気モーターをなるべく使わず、ギアやワイヤ、リンク機構で遠隔地のものを機械的に動かす装置の設計・製造を得意としている。
今回の「SE・サンダー」は、地元・大田区が選ぶ「新製品新技術コンクール」で2024年度の最優秀賞にも選ばれた。「すでに18台の受注・納入実績があり、増産対応を進めます」(森健一社長)と話している。