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高効率・高精度に誘電率を測定 ハーモニック共振システム

富士工業(川崎市多摩区登戸)は、「ハーモニック空洞共振器」による誘電率測定システムを販売する。衛星通信や電気自動車の普及など誘電体を使った電子部品の採用拡大に対応、その特性を正確に効率よく測定するシステムとして高分子材料など電子材料の大手素材メーカーや研究機関に売り込む。

機器とコンサルのセットも

コンデンサーなどに使われる誘電体材料は、電気をため込む能力を「誘電率」で表す。誘電率は利用時の周波数帯によって変化する。ハーモニック共振器は一個の共振器で8波の共振特性を持つため、周波数帯ごとに一つずつ必要だった従来の共振器に比べ広範囲の周波数特性で効率よく高精度に計測できる。

ハーモニック空洞共振器は、銅製の角パイプの立体回路で両端に入出力端子を備え、中央に測定する試料をセットする。長い空洞内では特定の周波数の正数倍の箇所で複数の共振が起きるハーモニック現象により、一台の共振器で複数の周波数のデータを収集できる。

マイクロ波・ミリ波帯に対応し、現在は1.8〜3.4ギガヘルツ帯から12.4〜18.4ギガヘルツ帯まで4種類を用意、今後30〜40ギガヘルツ帯まで拡大する。

測定にはハーモニック空洞共振器のほか、誘電率計算ソフト、パソコン、ネットワークアナライザ装置などが必要。同社では共振器単体を50万〜100万円で販売するほか、大手の研究所などなら保有しているネットワークアナライザ装置を除いた機器・ソフトとコンサルティングを合わせたセットも顧客の要望により500万円程度で提
供する。このほか、測定作業そのものの受託代行も可能だ。

同システムは旧・関東電子応用開発が磁性体の透磁率測定用に販売していた。旧社がM&Aで廃業したのを機に、主に旋盤・フライス加工の部品製作を請け負っていた富士工業がハーモニック空洞共振器事業を継承し自社製品としての販売に乗り出した。

「旧社時代には神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)などに納入実績があり、今後は既存ユーザーのサポート業務も行いたいです」(小口公平社長)と話している。

(2024年10月号掲載)