郁照電機(川崎市高津区野川)は、少数精鋭のスタッフで難易度の高い精密板金加工に対応する。得意とするのは極めて薄い金属の曲げ加工で、1ミリメートルの100分の1単位という家庭用アルミホイルのような材料から立体部品を成形する。同業者が断った難しい仕事が集まってくる、精密板金の駆け込み寺のような存在だ。
他社なら断る仕事も「意地で」
同社は実家の1階でプレス加工を行っていた佐藤製作所を前身とし、金型を学んだ二代目の佐藤隆社長が1989年に入社、94年に33歳で事業を承継し精密板金事業を拡大してきた。
社長と息子を含む現場4人と管理の女性2人で運営する小規模企業だが、各種の補助金を活用し最新の板金加工に必要な曲げ加工機やレーザー切断加工機をそろえている。
薄板の加工では、板厚10〜12マイクロメートルの極めて薄いアルミや鉄、ステンレスのほか、各種の非鉄金属やタンタル、モリブデンなどの難加工材料にも対応。
立体部品に曲げる前の平面形状を描く「展開図」の作成から、薄物専用のファイバーレーザー加工機での切断、立体形状への曲げ加工を行う。
加工の守備範囲は広く、幅3メートルまでの大きな材料に対応する曲げ加工機も保有、分厚く曲げにくい加工や曲げを繰り返す複雑形状の加工にも対応する。
顧客は同業者や商社からの依頼が多く、最終顧客は電機業界で弱電機器の接点など通電部品に使われている。同社の受注時点で残された製作期間が短く、即日対応など超短納期に対応することもある。
佐藤社長は「できない、やらない、大変、面倒くさいと10社以上に断られてきたような仕事を、考えてトライして形にしています。技術は『意地』です」と話す。
現社名は創業者の父・郁一(ゆういち)さんと母・照子(てるこ)さんの一文字ずつを取ったもの。定期採用は行っていないが、少数精鋭の仲間となる人材は大歓迎という。