中小企業の事業承継が課題となっているなか、内装工事業のTABATA(相模原市中央区田名)がユニークな取り組みをしている。2代目にそのまま会社を継がせることはせず、本人が自力で別会社を起業し、“社長業”の経験を積んでもらう。そして両社が協力関係を築くことでグループとして発展を目指す。
継がせず別会社設立
TABATAは昨年12月、グループ会社、GRANDILL(グランディル)を資本金500万円で設立した。といっても、TABATAにいた田畑佐稔社長の長男、田畑大氏が半分以上、自己資金を出して設立した企業だ。
父の田畑社長は「同族経営をしていたら、ほかの社員の士気が上がりません。自分も起業して今の会社を始めたので、息子にも経験して成長してほしいです」と狙いを明かす。
TABATAはクロス工事が主力。大氏のグランディルはリノベーション・リフォームが専門。業容は異なるが、それぞれ隣接する業種なので、仕事は協力できる。「互いにウインウインになれば、グループ全体の成長につながります」と田畑社長はいう。
会社設立からわずか1年。グランディルは今期、売上高2億3000万円、経常利益500万円になる見込み。当初2人だった従業員も5人になった。
「いずれTABATAと合流するのもよし、今の会社でずっとやっていくのもよし。本人次第です」と田畑社長。TABATAはこのやり方で、床暖房システムの施工会社、S・T・CREWも設立。営業本部長だった社員が、社長を務めている
■“半2代目”のような存在
グランディル社長の田畑大氏は若干24歳。「自分は“半2代目”のようなものです。会社設立以来、この1年間はあっという間で、今までの人生で一番短い年でした」と振り返る。
中学までは野球に没頭した。しかし高校はわずか半年で中退。「作業着がカッコいい」という理由から16歳で型枠大工の世界に。その後、TABATAに入社し、現在に至る。
社長業のかたわら、営業や現場もこなす。実際、会社の全受注案件の半分は自ら営業してきたものだ。「この業界はライバルも多く、これからが勝負です。来期は売上高5億円を目指します」と大氏。将来が期待される若手経営者だ。