住まいの産業 / ライフサイエンス

世界の希少木材、三浦の製材所に集結

松井製材所(三浦市三崎町)は、世界中から集められた希少な材木に直接触れて購入できる「木のショールーム」を運営する。ストックヤードを開放し見学できるようにしたものだ(要予約制)。あらゆる産地や種類、形状の木を常時数百種類そろえる。「ここに来れば何でも仕入れられる、いわば“材木の百貨店”です。ホームセンターなどに置いてあるものはありません。レアなものばかりです」と、松井正樹取締役は話している。

ニッチ戦略で専門店の地位

店内には、奈良の吉野桧(吉野杉)や秋田杉といった国産ブランドをはじめ、世界三大銘木のマホガニーや1000~2000年前の屋久杉などもずらりと並ぶ。

量販店の台頭や材木店同士の競争がある中で、こうした“こだわり”が奏功。本物志向の工務店や住宅メーカーなどの顧客をつかむ。材木も要望に応じ、自社や協力工場で加工して出荷している。

一方、内装や家具製作などでは、顧客のイメージを聞いた上で、膨大な種類の在庫から最適なものを複数示す提案型営業も実践。「ラフな手書きの図面や(内装の)構想段階からでも提案できます」(松井取締役)。

■知識を深め一線画す

戦後間もない1946(昭和21)年に、松井取締役の祖父が創業した老舗。しかし、松井取締役の代になると以前の市場環境とは一変した。

安価な海外産の流通や価格競争の激化...。材木店としての生き残りを模索することに。

「それならばと、(お客さんに)提案できるほど、木に対する知識を誰よりも深め、建築の知識も勉強しました」。建物や神社仏閣を見て回り、どの部分にどんな木が使われているかも徹底的に調べたという。

今では「材木コンシェルジュ」のような存在としての地位を確立し、数百社と取引。価格競争とも一線を画す、地域オンリーワンの存在となっている。

(2024年5月号掲載)