金属加工・樹脂加工・その他加工

デザインと精密板金の二刀流

落合製作所(横浜市都筑区折本町)は、精密板金加工を手掛けながら、デザイナーと協働したものづくりを進める“二刀流”の企業だ。200以上のデザイン関連作品に関わりデザイン関連の引き合いも多くなったが、モノづくりの原点を守るため、工業製品を中心に据える姿勢を貫く。あの「東京五輪2020」の聖火台の製作にも関わった注目企業でもある。

東京五輪の聖火台も製作

■新旧設備を使い分け

精密鈑金加工一筋の地元企業で、1965年創業。落合健一社長の祖父が大手電機メーカーの退職を機に、父の朝宏・現会長と立ち上げた。パソコンのキーボード製造を主力とし、約30人の社員を率いる。

キーボードはタッチパネルに押される時代もあったが、ゲーム業界の盛り上がりによりニーズが増加。高価格帯で機能性があるキーボードの需要も高まっているという。コロナ禍の影響も受けたものの、リモートワークの普及もあり増産傾向が続く。

金属に穴を開けてキーボードの形状にする工程を海外に任せる企業が多い中、同社は国内製造にこだわる。レギュラー品8機種を扱うが、コラボ製品の依頼が来ることもあり、生産量は多い時期で月8000台ほどだ。

設備投資に積極的な反面、足踏みプレス(ケトバシ)など、プレス機が自動化される前の原点ともいわれる装置を11台保有。案件によって最新設備と旧式設備を使い分ける。

■魅力伝えたい

一方で、デザイン性の高い金属加工も得意とする。昨年3代目社長に就任した落合社長が、イタリアの国際見本市に毎年作品を出展する世界的デザイナーと出会ったことをきっかけに、2008年から受注を開始。21年の東京五輪では金属製聖火台の製作に関わった。

これまで、デザイン関連では200点以上の作品を手掛ける。欧州からの発注も受け、売り上げのうち2~3割がデザイン関連を占めるほどになった。

ただ、工業製品メインとする姿勢は変えない。落合社長は「両方を一緒にこなすことで、頭の中で違うスイッチが入ってインスピレーションが湧くんです」と、工業製品、デザインの両方に取り組む効果を語る。

さらに「安定した品質を保つためには知恵も工夫も時間も必要です。そのために若い人も増やしたい。モノづくりのおもしろさ、奥深さを伝えていきたいです」と意気込んでいる。

(2024年6月号掲載)