住まいの産業 / ライフサイエンス

遠近感・立体感の「深視力」を訓練

街のメガネ店が快挙─。JR南武線・向河原駅近くでメガネ店「J-EYE」を運営するジンボ(川崎市中原区下沼部)は、遠近感や立体感を判断する「深視力」が鍛えられる世界初、極小コンピューター制御によるトレーニングシステムを開発。コンタクトレンズ大手メニコン創業者が創設した「田中恭一オプティカルアワード」の優秀賞を受賞した。「(同システムを使えば)航空機パイロットになるための身体試験や大型自動車免許、第二種免許の取得に必要な深視力のトレーニングが効率的にできます」と、神保徹社長は語っている。

コンピューター制御の装置を開発

深視力は、遠近感や立体感、奥行き、動的な遠近感を捉える目の能力の一つ。

左右それぞれの目で見ている映像のズレを修正し、一つのものとして捉えるのに必要な力。そのため、自動車運転における安全性やスポーツ競技などで非常に重要とされる。

検査は「三稈法(さんかんほう)」と呼ばれる方法で実施。直方体の機器の中に3本の棒を立てて、左右の2本を固定する。中央の1本を前後に動かし、受検者が3本の棒が横一列にそろったと思った時点でボタンを押す。

これを3回繰り返し、平均誤差が2センチ以内か、3回の合計誤差が6センチ以内かどうかで合否を決める。

ただ、深視力はトレーニングによってパフォーマンスが向上するため、多くのメガネ店でも「三稈法」を採用したトレーニング装置を導入する。しかし、従来型の装置では深視力のうち、動的な遠近感を判断する「追従性」を向上させることが難しかったという。

同店が開発したトレーニングシステムでは、「アルデュイノ」という極小コンピューターを搭載。棒の動かし方を低速・高速で自動制御できるため、効率的な訓練が可能だ。深視力向上メガネを購入した客であれば、トレーニングも無料で提供していく(事前予約制)。

■海外11カ国から来店

神保社長は、大学で電子工学を学び、ITベンチャーで画像処理システムの開発コンサルタントなどをしていた。

実家のメガネ店を継ぐにあたり、自らの得意分野と融合。IT技術を次々と駆使したソフトウェアを開発してきた。

「メーカーごとに素材の特徴もさまざまです。人によって合うメガネは異なります」。今では、海外11カ国からも予約が入るほどだ。

(2024年3月号掲載)