機器・装置・製品/ロボット

「プラグ抜け防止」製品、唯一の専業

アバンテック(横浜市都筑区川和台)は、「プラグ抜け防止製品」を生産する国内唯一の専業メーカーだ。医療機器から生産設備、さらにはスマートフォンの充電コードまで、同社の製品群はありとあらゆる電子機器の接続部を固定し、抜けを防ぐことでリスクを減らす。創業した高橋明弘社長が目指したのは「小さくても大手と対等に渡り合えるメーカー」。そのため、アナログながらも世の中にないアイデア製品を生み出し、市場を切り開いた。今では特許や商標など計15の知的財産を持って、知財経営を進める一方、完全週休3日制も導入する。

知財を武器にニッチの首位へ

■数限りない用途

電源プラグやUSB、LAN、HDMI、AC/DCジャック...。主力の「I/Oロックシリーズ」を中心に、接続するプラグやケーブルの抜けを防ぐための製品を計300種類以上そろえる。

「抜けを防ぐ」という用途や需要は数限りなくある。例えば、人工呼吸器やサーバー、それに放送設備など。万が一、プラグが抜けて稼動が止まってしまえば大問題になりかねない。大規模工場の生産ラインやキャッシュレス端末なども同じだ。

同社では各社の異なるケーブルの種類、仕様に応じて製品をラインアップ。「どんなメーカーにも対応しています」(高橋社長)と言う。

最近ではスマートフォンやタブレットのUSBタイプCケーブル用も開発、企業だけでなく一般消費者にも使われ始めている。ブラグ抜け止め製品も金具から脱着しやすい面ファスナー式、さらには段ボール素材を使ったものもある。

■小さくてもメーカーに

もともと外資系機構部品メーカーに勤務していた高橋社長。その一方で、副業として1991年、ロボット用計装ケーブルの販売代理店を自宅内で始めた。

普段は会社員として夜まで猛烈に働き、帰宅後は深夜まで副業をする生活を数年間続けたという。

やがて副業一本でもやっていけるほどの売り上げになり、脱サラ。大手光学機器メーカーからの大口受注にも成功した。

だが、転機が訪れる。大手担当者との打ち合わせの中、近くで資材担当者と下請け企業の打ち合わせの様子を目にした。「仕事をください」という下請け企業の社長に対し、担当者は「ない袖は振れない」と言い切った。

そんな様子を目にした高橋社長。「このまま下請け仕事をやっていたら、いずれ当社もそうなる。だったら、小さくても自社製品を持ち、大手と対等に話せるメーカーにならなければ、と決意しました」

その後、パソコンメーカーを訪れた際に目にした生産ライン。検査装置の電源ケーブルが抜けないよう、接続部を鉄板で固定していた。「もっと簡単にできるのでは」と思ったことが、I/Oロックの開発につながった。

■先を読んで開発

相次ぐ大地震や自然災害、そしてBCP(事業継続計画)の浸透もあり、需要が急増。そのせいか、今では「プラグ抜け防止」関連製品には、二番手、三番手の企業が続々と参入する。

だが「同じような製品を出しても、そもそもノウハウを積んでいないため、お客さんの要望や困りごとには応えられないはずです。最後には当社に回ってきます」ときっぱり。

一方、2年前から完全週休3日制(水・土・日曜日)を導入。「当初は周囲から言われることもありましたが、時間がたつと浸透していきました」としており、働き手のワークライフバランス実現につなげる。

高橋社長は、ニッチトップになるためには「時代の先を読み、これからはどんな製品のニーズがあるかを自ら予測し、開発することが大切です」と説く。

そして開発した後も「(製品が)時代に必要とされるまで5~10年はかかります。すぐに売れるものではありません。だからこそ『絶対に必要とされる時が来る』と自分に言い聞かせる強い信念が必要です」と強調している。

(2024年4月号掲載)