人感センサーとRFID(無線自動識別)タグの併用で広がる市場─。ドゥーイノベーション(東京都千代田区神田司町)は、機械警備の世界に一石を投じようとしている。無線通信を使って電子タグの情報を読み取る「RFID」と、人感センサーの特徴を融合させた「エリア検知センサー」のシステムを開発した。従来の人感センサーによる警備では、侵入者検知はできるものの、それが関係者か関係者でないかなど、人物の特定まではできなかった。しかし、同システムは、RFIDの情報を組み合わせることで、それを可能にし、細かなエリア警備も可能になる。

識別タグで従来の弱点克服

■人物の特定が可能

従来の機械警備システムは、建物などの“箱”の中を無人にしてセットし、人感センサーで侵入者を検知する仕組み。

しかし、このやり方は“無人の箱”であることが条件であるため、人が常時いるホテルや旅館、工場のほか、構造物の扱いとならないビニールハウスなども警備の対象にはならなかった。「機械警備における侵入検知の方法は50年近く変わっていないのが実情です」と、田口亮社長は明かす。

また、人感センサーのみだと、検知した人間が、たとえ関係者であっても、それを識別することができなかった。

今回、開発したシステムでは、人感センサーとRFIDを融合させた独自センサーを天井に設置する。それにより、
例えば同一エリアであっても、タグを持っている人には反応しないが、タグを持たない部外者が立ち入った場合にはアラームを鳴らすことができる。

タグには詳細な情報が書き込めるため、同じ社内でも「特定の人間だけが入る場所」といったエリア警備も可能になり、情報漏えい防止にもつながる。

■特別な工事も不要

用途は幅広い。病院や介護施設における徘徊検知、施設内での「関係者以外立ち入り禁止」管理、ビニールハウスの盗難防止対策...。これまで機械警備ができなかった場所での防犯が可能になるという。

田口社長は「(RFIDは)ローテクですが、活用範囲はまだまだあります。まずはセキュリティー分野で開拓してい
きたいです」と話している。

導入コストは20万円以内を想定するが、サブスクモデルも立案中。特別な設置工事は不要で、タグも既存の社員
証などに貼れる。今年度にもパートナー企業を見つけ、システムを量産したい考えだ。

同社はこのほかにも、インバウンド(訪日外国人)向けに、タグ付きチケットをかざすと母国語で表示される22カ国語対応の「おもてなしサイネージ」も開発している。

(2024年4月号掲載)