電力テクノシステムズ(川崎市麻生区万福寺)は、電力技術を支える「総合エンジニアリング会社」だ。一般財団法人・電力中央研究所(電中研)の主要取引先として、再生可能エネルギーから次世代火力発電所まで、注目される最先端研究をサポート。研究で使用する設備の設計や分析、実験などを手掛ける。そんな同社が注力しているのが、環境汚染が懸念され、今も終わっていない有害物質・ポリ塩化ビフェニル(PCB)問題の解決につながるPCB処理事業だ。

ライセンス契約で処理

■カネミ油症事件の余波

PCBは、電気を通しにくいなどの特徴から、かつては絶縁用の油などに用いられた。身近なものでは変圧器やコンデンサー、家電製品、塗料に至るまで幅広く使用されていた。

だが1968年、PCBが混入した米ぬか油を摂取し、1万4000人以上が皮膚病などの健康被害を訴えた。有名な「カネミ油症事件」である。

こうした問題を受け、国は74年にPCBの製造や輸入、使用を禁止した。世界でも2004年発効のストックホルム条約で、使用は25年までに、適正処理は28年までに行う努力目標が設定された。

しかしながら、問題は禁止される以前に生産され、現在も使われている変圧器などが残っていることだ。政府は01年にPCB特別措置法を施行し、高濃度のPCB廃棄物は23年3月、低濃度は27年3月までに専門施設で焼却処分することなどを義務付けた。

とはいえ、発電所などの大規模施設にある大型変圧器は「家1棟分に相当するほど巨大です。とても解体して移動させて処分できるサイズではありません」(杉山英生・技術営業部部長)としており、これまでは有効な処理方法がなかったという。

■オンデマンドで処理

こうした中、電中研などはPCB汚染物をオンデマンドで処理できる技術を開発。現地に出向き、PCB汚染油をポンプで抜きながら、内部に洗浄油を注油。加熱しながらブラッシング洗浄する方法だ。抜き取ったPCB汚染油は、専用炉で焼却していく。

これにより「設備を撤去することがなくPCBの除去が可能になりました」(同)。電力テクノシステムズでは、この技術をライセンス契約し、17年から実用化している。

現在までに電力会社を中心に全国約80の大型変圧器のPCB処理を実施。「国内で大型変圧器の処理は一段落しました」と言う。

しかしながら、「これからは民間の小型PCB機器が残っています」としており、今後は町工場やマンション、施設などでなお使われているPCB汚染変圧器の処理に乗り出していく。

(2024年1月号掲載)