プラスチック(樹脂)の射出成形加工を手掛ける、東邦プラテック(川崎市宮前区潮見台)の守備範囲は広い。汎用樹脂に始まり、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼ばれる機能性樹脂、需要が拡大するスーパーエンプラまでをカバーする。それも、成形だけにとどまらず、協力工場を巻き込んで、金型設計・製造から塗装や印刷などの2次加工、サブアセンブリーまでを一気通貫でこなす。強みは「お客さんと“五感”を合わせる」(三枝宏徳社長)とする品質、それに納期だ。得意先である音響機器メーカーから何度も表彰されるほどの高品質を実現しながら、新素材対応にも熱心だ。

汎用からスーパーエンプラまで

工場内に計6台ある射出成型機で少量多品種、年間1000種類もの外装材や樹脂パーツなどを生産する。取引先であるメーカー設計者の意向をくみ取り、金型の製作指示から請け負う。材料の提案をすることもある。

メーカーの開発部門と直取引していることで、同業者にありがちな価格競争に巻き込まれたり、無理な値下げ要請をされたりすることは、ほとんどないという。

主要取引先は音響機器メーカー。同社がパーツ製作を担う最終製品の多くがメードインジャパンの高級品。価格勝負の海外生産品とは異なり、10万円台の高級ヘッドホンもある。

当然ながら、品質要求も高い。それに応えるためには「何度もコミュニケーションを重ね、お客さんの品質基準の感覚と、当社の感覚を同期化する必要があります。言うなれば『五感を合わせる』ことが必要です」と、三枝社長は力説する。

品質感覚のような“図面に表れない部分”をいかに探り、ものづくりに反映させるかの努力は惜しまないという。

現在、不良発生率は年間1%以下を実現している。

■射出成形で高い光沢「鏡面仕上げ」

一方、技術面ではスーパーエンプラなどの最先端素材に対応。外観に高い精度が求められる成形品を得意とする。特徴的な技術の一つに「鏡面仕上げ(ミラー仕上げ)」がある。

射出成形のみで「高光沢」の成形品に仕上げるもので、塗装やコーティング材を一切使用しない難易度の高い技術とされる。金型を鏡のように磨き込むことで、転写した成形品を高光沢にしていくという。

また、工場では生産活動の全ての電力エネルギーを、再生可能エネルギー100%に切り替えている。県が推進する「かながわ再エネ電力利用応援プロジェクト」(かながわRE100)に再エネ電力利用事業者として認定されるなど、SDGs活動にも積極的だ。

(2023年2月号掲載)