金属プレス加工、マサオプレス(川崎市川崎区塩浜)は、AX(アナログトランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の両輪を回すことで競争力を高めている。「まずは設備投資ありき…」とされる、製造業の概念を変えようとアナログで古い設備や治具でも徹底的に使いこなす一方で、生産管理システムなどはデジタル化を進める。しかも多能工化も進めることで、金型設計から加工、試作、小ロット量産、組み立てまで「何でもできる」生産体制を構築する。

少数精鋭で総合力を実現

■バランスこそ大切

同社が進める「AX」とは、人手による作業のマニュアル化・標準化を指す船井総合研究所の造語を指す。

製造業の場合、生産性向上は「設備投資次第」とされるが、いくら最先端設備を導入しても、使いこなせるまでには時間がかかる。莫大な費用をかけて入れても、受注が見込めなければ減価償却もできない。

その点、同社はアナログな設備でも、日々の研究で徹底的に使いこなすことで生産性を高める。

具体的には、稼働時間の1割を、自分たちの技術力向上のために使っているという。その一方で、生産管理やデータ管理の部分はDX化を進める。「要は、アナログとデジタルのバランスです」と、宮澤章社長は説明する。

■自社製品も開発、返礼品にも

社員数5人(うち職人3人)の町工場だが、少数ながらも、CAD/CAMシステムからレーザー加工機、プレス機、ベンダー、ワイヤカット放電加工、バレル研磨機といった新旧計40台ある設備を使いこなす。時には溶接さえもやる。

「後継者不足で溶接や研磨ができる企業が年々少なくなっています。そのため、案件があった時に対応できるように、自社で技術を身に付けました」と宮澤社長。

ニーズを捉え業容拡大してきたことで、社員数5人ながらも、あらゆる加工に対応できる“総合力”を身に付けたという。

一方、若手社員が設計・製作し、自社製品「メタルパズル」を開発。一枚の金属板からパーツを切り取って組み立てるとミニチュアバイクになるもので、川崎市のふるさと納税返礼品にも選ばれている。

(2022年12月号掲載)