金属加工・樹脂加工・その他加工

「ナイトカバー」のパイオニア企業

スーパーやコンビニエンスストアで見かける「ナイトカバー」。冷蔵庫・冷凍庫の冷気漏れを防ぎ、陳列商品の鮮度を保つとされ、主に店舗の閉店後に使われている。そのパイオニア企業が川崎市中原区にある。モダンプラスチックが、初めて国産化したのは1976(昭和51)年のこと。以来、約半世紀にわたり、日本全国に供給している。こうした中、同社のナイトカバーが再び脚光を浴びている。ウィズコロナ時代における感染拡大防止や、電力不足による節電対策などが背景だ。ナイトカバー1枚でこれらの効果が発揮できることから、問い合わせが相次ぐ。

脱炭素で再び脚光

■「国産」にこだわり

同社が製造販売するナイトカバーのほとんどはカスタム品。「機械化できない分野」(永井敬一社長)であるため、職人による手作りが主体だ。これを年間6万本生産している。

冷蔵用か冷凍用か。あるいは使用目的やサイズでも異なる。フィルムや布のほか、冷凍用では極めて薄いアルミ素材もある。一見すると、どれも薄いカバーだが、そこには同社の技術力が詰まっている。

例えば、冷蔵用のフィルム製ナイトカバーには、表面に無数の「穴加工」が施されている。これにより、外気と“呼吸”をさせることで表面の結露を最小限に抑える効果がある。

これに対し、布製ナイトカバーは外気温をシャットアウトさせ、保温・保湿することで省エネ効果を出す。抗菌・防カビ加工もしている。

いずれの製品も「国産」にこだわり、同社独自の基準を満たしたもののみを使用している。

■技術継承し進化

1954年9月に設立。当時は販促用のビニール人形を手掛けていた。不二家・ペコちゃん人形や、薬局前にあるサトちゃん人形、ビクター犬などだ。

60年代に入ると、高度経済成長時代の象徴だった自動車産業にも参入。サプライヤーとして内装部品を始めた。だが、業界の市場規模が大きくなるにつれ、コストダウン競争も激化した。

そんな中、70年代に入ると、大量販売、大量消費が進んだ米国で使われていたナイトカバーを国産化できないかとの話が商社から舞い込んだ。ただ、そもそも日本と米国では、気候のみならず、冷蔵庫・冷凍庫に置かれる食材も異なる。求められたのは“日本仕様”だった。

幸いなことに、同社には自動車部品やビニール人形での経験があった。そして試行錯誤の末、完成にこぎ着けた。以来、半世紀近くナイトカバーを生産し、現在の主力製品になっている。

■コロナ対応製品も

。これまでは店舗での温度管理や、異物混入防止などを目的に使われてきたが、脱炭素化に対する機運が高まる中、省エネにも効果があるとして、全国チェーンなどから次々と引き合いがきている。

「(スーパーなどの事業者にとって)電力は必要不可欠ですが、節電の流れもあり、電気料金も高騰しています。ナイトカバーが少しでも役立ったら…」と永井社長。

一方、ウィズコロナ時代の新商品として、ナイトカバーの技術を応用した飛沫防止パーテーションも開発する。

ビニール・プラスチックの加工技術を継承しつつ、時代の流れに応じ、主力製品を変えていったことが、ここまで生き残ってきた秘訣でもある。

歴史はあっても“モダン”な会社─。社名に込められた思いが、それを物語っている。

(2022年9月号掲載)