毎秒数万回の微細な振動を刃先に伝えることで、切れないものを切る「超音波カッター」。樹脂やゴム、不織布、カーボン、ガラス繊維、フィルム…。切断するのが難しいとされる、あらゆる材料を自由自在に切り取る魔法のカッターだ。ソノテック(川崎市高津区末長)が超音波カッターを初めて開発したのは30年ほど前。今では、その市場をグローバルで構築しつつある。
独自技術で海外市場開拓
超音波研磨機と超音波カッターを軸に“超音波”技術を応用した機器を開発する。このうち、超音波カッターは国内シェア首位。経済産業省からも「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれている。
微小、かつ強力な超音波振動を発生させ、その力を刃先へと伝える。これにより、従来では難しかった素材の切断が可能になる。微振動は毎秒2万~4万回発生。シャープな切断面が得られ、材料も無駄なく切ることができるのが特徴だ。
レーザーやウォータージェット、工作機械(フライス盤、エンドミル)などを思い浮かべる。ただ、いずれの設備も大型で高額。中小製造業が導入するにはハードルが高い。さらに、これら加工設備は、稼働とともに使用済み切削液となる排水や、粉じん処理も必要になってくる。
■海外30カ国に普及
その点、超音波カッターは粉じんや排水処理がほぼ発生しない。「導入コストのみならず、ランニングコストも優位です」(加藤毅・技術部部長)といい、既存設備から超音波カッターへと乗り換える企業が増えているという。
現在、計6シリーズを発売。25万~150万円台で導入できる点も魅力だ。
多関節ロボットや既存の工作機械に取り付けられるほか、手持ちで使えるタイプもある。特注にも柔軟に対応。すでに国内1000社、海外200社・30カ国以上に納入。大手自動車や航空機メーカー、研究・開発機関など幅広い業種で普及している。
そもそも、同社が超音波カッターを世界で初めて生み出したのは30年ほど前。1982年7月の会社設立時は、金型を磨く「超音波研磨機」の専業だった。ある時、お客さんから「刃物に超音波振動を発生させることで、難しい材料を切断できないか」という声があり、開発に踏み切ったのがきっかけだ。
とはいえ、発売から時間もたち、参入企業も増えてきた。安価な類似品を出すアジアの競合の存在もある。しかし、いくら模倣しても、特殊な刃物や工具を超音波振動させる技術は、パイオニアである同社が抜き出ている。
その強みを活かし、今後は“本家”超音波カッターの魅力を訴求していくことで、海外市場におけるシェア拡大に先手を打つ。営業技術部の石川浩介課長は「お客さんの声をよく聞き、1件1件を丁寧に対応していくことで、さらなる販路拡大につなげたいです」と説明。半導体関連産業への拡販も視野に入れているという。