創業55年のそば店、幸町満留賀(川崎市幸区幸町)が、このほどリニューアルした。サラリーマンでにぎわっていた駅前オフィス街近くの店を一般客向けに改装し、メニューのラインアップや店休日も変更。小さな店内でインターカムをフル活用し、サービスを磨く接客を始めた。そこには、将来を見据えた経営判断があったという。
将来見据え変革
「この店は自分たちの代までにしよう。ならば5年後10年後はどうあるべきか、と以前から考えていました。新型コロナで世の中が変わり、変えるのは今だと思いました」と、野田直裕店主。休日も地元の人に愛される店を目指すことで、歳をとっても続けられる店づくりを進めた。
具体的には、来店客像を詳細に描き、「その人だったら、どんな雰囲気を心地良いと思うか」「どんなメニューを食べ、どんな過ごし方をするだろうか」を、徹底的に考えたという。
それに合わせて、店にカウンター席を作り、合わせてメニューも開発。ボリューム重視よりも、あっさりしたものや野菜を多く取り入れたメニューを増やした。
カウンターとテーブル席があり、スタッフ3人で稼働する店だが、インターカムを導入。従業員が小声の会話で連絡が済むようにした。
これまでは用事があるたびに集まったり、厨房に聞こえるよう大きい声で会話をしたりしていたが、「これを使えば、カウンター担当が奥の厨房に小声で伝え、常連さんが帰る時にはサッとあいさつに出るなど、気遣いもできます」と野田店主は語る。
無駄な動きがなくなり、仕事の効率化とサービス向上につながっているという。
先代が創業し、この地に移転したのは約40年前。すでに高度成長期は終わっていたが、まだまだ「出せば売れる」の時代だった。出前といえばそば、お客が来ればすしといった具合に、売り上げにも困らなかったという。
ただ、時代とともにオフィスビルや大型商業施設が次々と建設され、そばやすし以外にも選択肢が増えると、経営環境も変わった。
行列のできる老舗そば店に教えを請い、新メニューを開発したり、素材にもこだわったりと、生き残りをかけて少しずつ進化を続けてきた。
今でも休店日の食べ歩きは欠かさない。「職人であることを追求する以上に、いかに売るかを追求することが大事です。食べ歩けば、そこに全ての答えがあります」。