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化学実験の設備、小型化が可能に

マイクロ化学技研(川崎市幸区新川崎)は、特殊な技術で溝加工を施した小さなガラス基板(マイクロ化学チップ)を積層することで、化学合成や実験、分析に使う設備を小型化できる「マイクロ化学技術」の本格展開を進めている。

「持続可能な社会形成に貢献」

同技術は、数センチ角の小さなガラス基板上に、幅が数十~数百μmの超微細な溝(流路)をつくり、空間を利用。そこで混合や反応、分離、検出、合成といった化学操作をしていく。例えば、重金属の分析なら、これまで専用設備で3時間かかっていたのが、50秒に短縮できたケースもあるという。

ただ、ガラス基板に超微細な溝を加工するには“熟練の技”が必要で、一枚を製作するのにも膨大な時間と費用を要していた。そこで同社は、大手電機メーカー、パナソニックと連携。金型を使ってガラスに微細形状を形成するパナソニックの「ガラスモールド技術」を活用することで量産化技術の開発に成功。製造コストは従来の10分の1程度に低減しつつ、約10倍の高精度化にもつなげた。

「マイクロ化学チップが広く使われることで『社会によいこと』が起こります。(実験や研究などにおける)電力やスペース、廃棄物の削減にもつながります。持続可能な社会形成に貢献する技術だと信じています」と、田中勇次社長は語る。

今後は、マイクロ化学チップの市場拡大が見込まれる医療やバイオ、環境向けのセンシング分析などの分野での普及を見据えている。

(2021年4月号掲載)