現代に“炭”のある暮らしを―。炭卸業、福田商店(川崎市幸区中幸町)は、日本で約30年万前から使われ始め、伝統文化とも縁が深い炭を現代の生活に普及させようと、BtoC(消費者向け)への展開を進めている。第一弾として商品化したのが、江戸時代に人気だった野燗炉(のかんろ)の現代版だ。コロナ禍で続くアウトドア需要の高まりもあり、生産が追いつかない状態が続く。
アウトドア人気で開発
1950年創業の老舗。飲食業を中心に業態や用途に合わせ、備長炭からキューブ状の炭までを提供する。国内外に10ある提携工場で生産。100種類以上を取り扱っている。
転機となったのは、昨年からのコロナ禍。得意先である飲食業からの注文が減った。その一方で、流行語大賞に「ソロキャンプ」が選ばれるほど、アウトドア人気で炭の需要が高まっていた。そこで「一般消費者向けの商品展開を本格的に考えました」(福田貴久社長)と、自社商品の開発を始めた。
着目したのが、炭屋だからこそ知る「炭の楽しみ方」。かつて江戸時代には「野燗炉」という、日本酒を温めながら横で酒のさかなも焼けるアウトドアグッズがはやっていた。いわば、野外で茶道を楽しむ野点(のだて)の酒版だ。
同社はこれを参考に、熱燗と炭で焼いた本格的な酒のさかなが楽しめる現代版の野燗炉「chibi chibi(チビチビ)」を開発。アウトドアだけでなく、屋内やべランピング(ベランダでのアウトドア)でも楽しめ、インテリアにもマッチするデザインを採用。火気の安全性にも配慮した。