住まいの産業 / ライフサイエンス

シャワーカートリッジ、シェア9割

三和精機工業(相模原市緑区名倉)は、シャワーヘッド用カートリッジの生産で、国内シェア9割超を占める。家庭用シャワーで使用するシャワーヘッドは、簡単に付け替えられることが認知されており、残留塩素の除去だけでなく、美容分野などでさまざまな機能商品が市場に出ている。使い続けるには有効成分が入った消耗品カートリッジが必要となるが、その設計から生産までを同社が一手に担っており、国内メーカーのほとんどと取引。各社の仕様に合わせたカートリッジを供給している。

藤野の工場で一貫生産

自然豊かな藤野地域(旧藤野町)に工場を構えており、ここで年間250万個のシャワーヘッド用カートリッジを生産する。かつては大手企業からカメラのアセンブリーや日本初の湿式サイクロン掃除機の設計・生産を受託していたが、「お客さんからの注文書ありき…」とする下請け体質からの脱却を目指し、OEM(相手先ブランド生産)ビジネスの育成を進めた。

「(製造業である限り)よい製品作りはいくらでもできます。しかし、ニーズがあって売れる製品・分野でなかったら新規参入する意味がありません。最初からニーズを見極めた上で参入することが大切です」と佐々木敏夫社長。そして出会ったのがシャワーヘッドの分野だった。

市販されている後付けタイプのシャワーヘッドは、かつてはアトピーなど敏感肌の人が残留塩素除去のために使用していたが、最近ではいろいろなタイプが出回るようになった。毛穴汚れの洗浄や保湿といった美容、それにコロナ禍を背景とした除菌・消臭など、多様化している。

ただ、どのシャワーヘッドにも有効成分を詰め込んだカートリッジが必要。そのカートリッジは少量の有効成分で、少なくとも1カ月は交換しなくても済むような設計が求められている。同社はそのノウハウを持っているため、オンリーワン企業になっている。

■地元生産にこだわる

同社が位置する藤野地域は、市内でも製造業が少ない。同地域は「芸術のまち藤野」として知られ、移住希望者も増えている。しかし「地場で雇用を生み出して過疎化を防ぐためには産業を残す必要があります」(佐々木社長)としており、1968年の設立以来、地元での生産にこだわり続けている。

(2021年4月号掲載)