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人材獲得、定着の独自策が奏功

台湾で“最強”とされる精密板金工場がある。志鋼金属(台南市)は20年以上前、たった数人で始めた町工場だったが、今では従業員数350人以上を抱える台湾屈指の金属加工業へと成長した。蔡英文総統も視察するほどだ。製造業は仕事や設備があっても、最終的には人材に左右される部分が大きい。日本では製造業離れや高齢化などが進んでいるものの、同社はユニークな取り組みにより、若い人材の獲得や定着化に成功。人材を武器に成長を遂げる。

台湾屈指の精密板金業

■見学専門工場を設置

薄物を中心とした精密板金から塗装、シルクスクリーン印刷までをワンストップで手掛ける。通信や半導体関係、電機業界などの部材、筐体を生産。筐体などにブランド名や表示を入れるシルクスクリーン印刷設備までそろえるのは、台湾でも珍しいという。内製化を極力進める理由としては「社内でやった方が品質が安定します」(郭治華総経理)という理由から。モノによっては、日本からの注文でも台湾で一貫生産した方が安くなるという。

工場は24時間稼働。全従業員の平均年齢は28歳だ。同社の場合、学生などの若者が精密板金に興味を持ってもらえるよう、「見学専門工場」を持っている。観光客も随時見学できるだけでなく、チケットを購入すれば、ものづくり体験ができる。オリジナルのスマートフォンケースや携帯カードなどを作る人たちが目立つという。郭総経理は「実際に板金業の面白さを体験してもらい、入社につなげています」と説明する。

■年齢に応じ3交代制

現場は3交代制。「8時~17時」「16時30分~24時」「23時30分~8時」に設定する。早いシフトは多品種少量で難しい仕事を集中的に入れ、遅いシフトになればなるほど単純な量産仕事になっていく。

体力がある若い従業員は、スキルが身に付くよう、内容が難しい早いシフトを担当。年齢を重ねると、比較的楽な夜勤に入ってもらう。夜勤担当は45歳以上で、給料が日勤より高いため、希望者が続出しているという。ただ、早い時間の複雑な仕事は経験が問われるため、管理職には技術がある若い人材を抜てきしている。

こうして同社では年齢に応じて担当や働き方を柔軟に変えることで、定着化を図っているという。

(2021年4月号掲載)